ランチタイム!
昼休み。
「なんか…どっと疲れたな。」
全く、登校初日からなんでこんな立て続けにイベントが起こるんだ。
これが転生効果と言うやつなのか…。
「さて、どうするかな。」
鞄に筆記用具以外の授業道具を一切入れてなかったのに(現国の授業の後ジャージを含む授業道具はリオが出したドアで取りに帰った。)しっかり弁当だけは忘れずに持ってきていた俺である。
せっかく初めて通う高校での昼休みなのだ。
この機会に探索をしてお気に入りスポットを模索するのも良いかもしれない。
そう思うとちょっと楽しくなってきた。
「何しれっとボッチ飯しようとしてるんですか?」
意気揚々と教室を出ようとしていると、リオに肩を掴まれた。
え、 力強っ...。
「な、何を言う。
ボッチ飯とか最高じゃないか。」
一度目の学生時代は基本教室で食べるのが主流だった訳だが、せっかくこんなに広くて立派な学校に入れたのだ。
探検心をくすぐられるのは仕方ないと思う。
「別に、それならボッチ飯じゃなくても出来るじゃないですか。」
「ちっちっち、分かってないな。
良いか?ボッチ飯はノープランで良い。
ここにしようとか自分の思い付きで決められるし、自分のペースで誰にも邪魔されること無く無心で食を堪能出来るんだ。」
「うわぁ...めんどくさいなぁこの人。」
おい本音が出ちゃってるぞ…。
「出してるんですよ…。」
深くため息を吐くリオ。
「本当に分かってますか?悠太さん。
あなたはこの学生生活でもしお相手が見つからなかったら…」
「分かってるって。」
理屈としては理解してる。
でもだからすんなりその理屈を受け入れられるのかと言われると、答えはノーだ。
「でも俺はもう恋愛なんて…」
「ゆりたん!」
と、勢い良く教室に入って来たのは
「しょうたん!来てくれたんだ!」
それに幸せそうな表情で明るく答えるのはクラスメイトの
「勿論!さっ、一緒に中庭に行こうか。」
「うん!」
そのまま両者ともに笑顔で手を繋ぎながら俺の横を通り過ぎていく。
「恋愛なんて滅べば良いと思う。」
「恨みがこもってる!?
絶対ラブコメの主人公が言っちゃダメなセリフですよ!?」
おっといかん。
つい本音が出てしまった。
「しかもリア充が、とかじゃなくて恋愛がって所がまた悠太さんらしいと言うか…。」
「ははは、俺の事をよく分かってるじゃないか。」
「いや…褒めてませんからね…?」
「おっといかん、いい場所を確保するためにもさっさと行かないとな。」
「そんな事言って、ちゃっかりいい場所無かったとか言って保健室に転がり込むつもりなんじゃないですか?」
「ソンナコトナイヨ?」
「やっぱりじゃないですか…。」
どうしてバレたのかしらん……。
何この子エスパー?
いや、普通に天使だったわ……。
「なんだ?悠ちゃん勉強食わないのか?」
言いながらバクバクと唐揚げ、ハンバーグ、生姜焼きと肉マシマシな弁当を平らげている秋名。
野菜食え野菜。
「せっかくだから三人で食べれば良いじゃないですか。」
「え、何リオちゃん俺と食べたいの?」
「え?違いますけど?」
「即答かよww」
どうもこないだの思わせぶり案件からかリオの秋名に対する当たりが強くなってるような気がする、、。
「悠にぃ!まりも!」
「あ、ずるい!お兄ちゃん!私も!」
愛すべき日奈美、茉里愛のシスターズもお揃いの様で。
「これは悠✕秋かな…いや秋✕悠かも…うん、推せるわ。」
「は、ハッチーまで…。」
「やっほー悠兄。」
黒縁メガネに背中程の髪。
童顔、小柄で小動物のような可愛らしさだが、最初の発言でお察しの通り腐女子である。
でもハッチーカワイイヨッシャ、異論は認めない。
「ウチは可愛くない!」
叩かれた。
このノリも懐かしいなぁ。
「こんなのおかしいよ…。
お兄ちゃんは私だけのお兄ちゃんの筈なのに…筈なのに…」
そんな俺と美紀のやり取りを見て、日奈美が落胆の表情を浮かべる。
「ひーちゃん…?落ち着こう…?」
「お、悠さん。
僕も御一緒していいかな。」
ウホッ、良い男。
ゲフンゲフン。
前世でも親友として関わった黒髪ショートのワイルド系イケメンである。
でもそんな見た目に反して性格は内気で穏やか。
カッコ良さの中にどことなくチワワのような可愛らしさもある。
オマケに家事スキル万能で、料理までこなしてしまう。
その上イケメンである←大事な事なので二回言っておきました。
「智兄✕悠兄…!!
あ、これ最高だわ…。
ごめんウチ保健室行ってくる…。」
真っ赤に染まった手で鼻を抑えながら教室を出ていくハッチー…。
本当、どうしてこうなった。
でも可愛いから許すっ!
「お兄ちゃん?」
微笑ましく見送っていると、日奈美に睨まられた。
「はいっ!ひーちゃんが1番可愛いですっ!」
「ふ、ふーん?なら良いけど……。」
あ、ちょっと嬉しそう。
そんなこんなで、結局この場には俺、秋名、智成、の男性陣、リオ、日奈美、茉里愛と、人数構成的には合コンの様とも言えるメンツでの昼食会が始まった。
相変わらず肉料理のオンパレードな秋名の弁当にプチトマトを放り込みながら、それぞれの弁当を見回す。
「あ!勝手に!」
「うるさい、野菜も食え。」
「お兄ちゃんそう言ってプチトマトが嫌いなだけでしょ?」
流石日奈美、俺の好き嫌いまでバッチリ把握済みである。
ちなみに俺の弁当と日奈美の弁当はどちらも日奈美のお手製である。
プチトマトが入っていた事を除けば、味付けも俺好みだし、ちゃんと色合いも意識されていて中々の完成度だ。
プチトマトが入っている以外は。(2回目)
「どんだけプチトマト嫌いなんですか…?」
呆れながら目刺を齧る天使みなら…え、目刺?
「なんですか?目刺美味しいじゃないですか。」
不審に思って見つめる俺を心外だと言わんばかりの表情で睨むリオ。
「いや、そう言う事を言ってるんじゃなくてだな…。」
そう言うと、リオの目からハイライトが消えた。
「私…今月1ヶ月の給料目刺1ヶ月分なんですよ。」
「どう言う状況!?」
これにはその場にいた全員でツッコんだ。
「実は以前職場でちょーっとやらかしちゃいまして。」
そう言う場合大体ちょーっとじゃない。
だって目刺一ヶ月分て、、何したらそうなるんだろ……。
考えたくもない……。
「えっと、職場?アルバイトとかしてるの?」
日奈美がおずおずと聞く。
「え、あー違います、そうじゃなく…んむっ!?「そうそう!漁港とかだったよな!?」」
危ない危ない。
下手にこいつが天使だとか言い出せば絶対周りが困惑するに決まってる。
「ま、まぁそんなとこ…ですかね……。」
「な、なんか大変だったんだね…。
よ、良かったら私のお弁当ちょっと食べる?」
「い、良いんですか!?」
目を輝かさせて日奈美を見るリオ。
「じゃあ僕のも分けてあげるよ。」
智成の弁当も中々の出来栄えである。
「ほとんど昨日の残りを詰め合わせただけなんだけどね。」
本当かよ〜とか思いながら俺も貰ってみる。
いや、うまっwwこのハンバーグとか肉汁たっぷりじゃん。
一方の茉里愛は購買組らしい。
長いタイプのクリームパンをもちゃもちゃと可愛らしく食べていた。
なんだこの可愛い生き物、ずっと眺めてられる。
「ん?悠にぃも一口食べたいの〜?」
「あぁ、いや。」
「はい、あーん。
ね、関節キス…だね。 」
先程までもちゃもちゃしていたパンの先を向けながら、耳元に小声で囁きかけてくる。
「お兄ちゃんはそんなパンなんか無くても毎日私の手作り!弁当があるから!」
言いながら日奈美がそのパンを差し出す手を押しのけようとする。
「何を〜ロングスティックの魅力が分からないなんて人生八割損してるよ〜?」
俺の妹と義妹が修羅場過ぎる。
あれ、なんかラノベのタイトルっぽい。
「リオちゃんごめん、俺もうあげれるものないわ。」
お前には最初から期待してないw
「あ、大丈夫でーす。」
「真顔つらたんw」
しばらくそんな感じで談笑を続けていると、ふと日奈美が俺の机に目を向ける。
「あ、お兄ちゃん!また机の下にプリントとか溜め込んで!」
「うわ、本当だ汚なっ。」
言われて覗き込むと、確かに折られもせず無理やり突っ込まれてぐしゃぐしゃになったプリント類がこれでもかと詰め込まれていた。
「お兄ちゃんの机だよ…?」
そうだった…。
とりあえず今日持って帰るかと、机の下からプリントを出そうとしたところで。
パサ。
小さく音を立てて落ちたのはプリントではない。
可愛いらしいハートのシールが貼り付けられた便箋。
「ラブレター!?」
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