第11話 翔太とのデート再
午後から、この間と同じ銅像の前で待ち合わせた。
「俺を待たすのが趣味なわけ⁈」
「それでも、約束の時間には間にあったわよ」
「ギリギリだけどな。それと、その服よっぽど好きなのか着る服がないのか⁈」彩は、また同じ白いワンピースを着ていた。
「あんたっていつも、はっきりものをいうわね。両方ともハズレだけどね。着倒して、早く捨てたいのよ」
「コーヒーでも、ぶっかけてやろうか⁈」
「そういうのは嫌なのよ。高い服だし」
「そういう面倒な気持ちはわからないな」でも、彼氏がくれた服だということは想像がつく。つまり、過去形にしたいってことだよな。そう思うと、少し気持ちが軽くなる。
◆◇◇◇
映画館の前で、どれを観るかで二人はお互いに譲らなかった。
「やっぱ、恋愛ものでしょう」と翔太は言う。
「‥‥犯人は誰だ2 続きが絶対でると思っていたのよね。これが観たいわ」
結局、ジャンケンで勝った方のを観ることに決めた。そして、負けた方のを次に見ることにした。
(次も会えると言うことだから、いいけどね。でもさ、その映画まえの時は、彼氏と観にいったんだよね?俺って、こんなに疑い深い性格だったっけ。なんだか自分でも嫌になる)
彩が選んだ映画が始まって館内が暗くなっていった。
「えっ、うそ」
「そんな‥‥」彩は始終、映画の内容に驚いたり残念がったりして声を漏らしていた。
『犯人は誰だ1』を見ていない俺からしたらまったく意味が分からなかった。それでも、見ていく内に内容を理解していった。映画もよくできていたが、隣の彩の表情や仕草と漏らす声で楽しめた。
そして、映画デートの定番のポップコーンと炭酸飲料が彩りを添えていた。
大きなポップコーンの箱?を持っていると、隣の彩が手を伸ばして幾つか掴んで頬張る。次に俺も手を入れ、キャラメル味のそれを頬張る。隣に、彼女がいることがこんなに嬉しい自分に気がつく。
「ああ、面白かった。あの捻りきった終わり方も満足だわ」映画を見終わった彩は、嬉しそうに言う。
「ああ、一筋縄ではなかったな。次は、どこに行く? 食事にしては、早すぎるだろ」
「そうね。カラオケは、どうかしら⁈」
「カ、カラオケ‥‥」
「苦手なの⁈」
「あまり行った事がないけど。彩さんが歌うのを聞いているよ」
「そんなの嫌よ。どうせ一緒にいくなら、音痴でもいいからさあ、歌ってよ」
「お、音痴って⁈ わかったよ。少しなら歌う」
◆◆◇◇◇
いらっしゃいませ。
感じのいい店員は、マニュアル通りに注文を進める。
「とりあえず、2時間ぐらいにしようか」
「1時間でも、俺はいいよ」
「私は、久しぶりだからたくさん歌いたいのよ‥‥」
番号を確かめながら部屋に入ると、手慣れたように照明の明るさを変えやマイク等を用意し選曲を始める。
「あ、その前にフリードリンクを持ってくるわ。何が飲みたい?」
「あ、俺が行くよ。彩さんは?」
オレンジジュースと紅茶を持って部屋に入ると、もう彩さんはマイクを片手にドアを開けてくれる。
「かなり、上手いねえ。じゃんじゃん歌ってよ。なんか、軽食でも頼もうか?」と言ってメニューを選ぶ。
「まだ、お腹は空いていないからいいわ」
「うーん、できれば歌いたくないんだけど‥」
「大丈夫よ。別に下手でも気にしないから」
「そんなに言うなら、わかったよ」といい、予約を入れる。
「え、これ歌えるの?」何年か前の歌だけど、私も好きな歌だった。
マイクのスイッチを慌てて押してあげる。若い子にしては珍しい。本当にカラオケ行ったことないの?
『♪こんなにもー切なくて‥♪』画面を、食い入るように見ながら歌いだす。
(えっ、上手い。というか、歌手そのものじゃない。こんなに綺麗に高音部が出るなんて…)
「なんだあ。すごく上手じゃない。よく、歌っているのね」
翔太の声に聞き入っていると、途中で歌が止まった。
翔太の方を見ると、ドアの方を指さしている。
「えっ」ドアの一部は透明になっていて、そこから数名の若い男の人が覗いていた。
「あの、どうかしましたか⁈」翔太はドアをいきなり開け、テレビのドラマ番組のようにドアにへばりついていた若者数名に話しかける。
『あ、いえ。本物かと思えるほど上手だったもので』
『なんだ、男とおばさんじゃん』
『麗奈かと思ったよ。マジで』
『行こ、行こ』
と、言って去っていった。
「歌手と間違われるほど上手いのね。びっくりしたわよ。でも、おばさんって⁈ 誰のことよ」
「まあ。かなり若そうだったからな(笑)だから、歌いたくないんだよ。声質が似てるだけだろ」
それからは、童謡やらアニメソングやら、デュエットをして楽しんだ。
「あなたの仕事ハッキリ聞いてなかったけど、歌手じゃない⁈」上手すぎるもの。
「さあね。僕と結婚してくれるなら、即答するけどね。でも、その前に彼とはちゃんと別れたの⁈」
「‥‥気になる⁈」
「気になるに決まってる」
「でも、君なら私じゃなくても、若い可愛い娘達に大モテだと思うけど」
「話をはぐらかさないでくれないか。恋愛感情がない方が割り切れると思って…最初の頃はそう思っていたけど‥」
「あなたも、苦しい恋愛をしたのね。おねーさんが、慰めてあげるわ」翔太の話を遮るように、手を翔太の頭に持っていき少し撫でる仕草をした。
「からかわないでくれない」
そう言って、私の手は振り払われた。
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