第2話

二年の学年主任と生活指導の先生が、ある男子生徒の名前を呼んで探し回っていた。



「どこにもいませんねぇ」「…ったく、中本の奴二年になってから急に悪くなりやがって」


先生達にお辞儀をして通り過ぎようとした私に、生活指導の先生が気が付く。



「おー、宮下、お前、東A高志願なんだってな。頑張れよ」


「はい、ありがとうございます」



目立たない私だけど、秘かに成績は悪くなくて、県で一番難関のA高校も合格圏内だと言われていた。


再びお辞儀をして職員室に向かう。

途中、一年生女子がはしゃいで喜び合っていた。



「下駄箱に中本先輩の靴あったー♪」

「じゃ校舎のどっかにいるんじゃん!」


ーーまた ″中本″。



最近、よく耳にする名前の男子を私は知らない。

年下だし、問題児だとも聞いていたから、関心がなかった。

何より。



「あ、宮下。放課後にわざわざ呼び出して悪かったな」

「いえ」



職員室に私を呼んだ、この国語の小林先生に片思いをしていたから。

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