ヴィレッジIWAYA顛末

榛葉琥珀

第一章

プロローグ

 大通りへ向かって走る。

 恐怖と夜気の冷たさで目に涙が溜まって前がぼやける。

 息が詰まって苦しい。首と背中に冷たい感触と重み。魚が腐った様な腐臭がすぐ後ろにあるが、振り向けば見えるモノを認識するのが怖くて振り向けない。

 人気のない路地を走り抜け、大通りへ向かう真っ直ぐな道に出ると、夜の都会の光が見えた。

 口から悲鳴とも歓喜ともつかない叫声が漏れ出た。

(助けて)

 大通りへ向かって走る。一目散に。

(誰か助けて)

 背中のモノを引き剥がして。

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