黄泉平坂サブch【ウィークリー生配信】202✕年2月16日配信

【ウィークリー生配信】202✕年2月16日配信


(略)


「それでですね、タクミさん」

「ん? なに?」

「ここからが本題なんですけど」

「え? ちょっと待って、これデジャヴ?」

「先週、こちらの生配信でお話した『幽霊が全くいない場所』についての続報なんですけど」

「あ、うん! あれどうなった?」

「先週の配信を見ていない方もいらっしゃると思うので、簡単に説明させていただくと」

「うん」


「その、これは所謂『視える人』から聞いた話なんですけど。生き物が死ぬと肉体と魂が分かれるように、魂──つまり幽霊だよね──が成仏した後には、幽霊にとっての肉体のようなもの──魂の残滓が残るんですって」

「その話、めちゃめちゃ興味深いよね」

「ね。それで、その残滓って、特にそれ自体は良いものとか悪いものではないらしくて。こう、だから除霊とか、そういうことは出来ないものらしいんですよ」

「うんうん」

「だからその残滓って、昔のものでもずっと残ってるんだって」

「でもそれだとさ、視える人からしたら、その辺に遺体が転がってるみたいな感じに視えるってこと?」

「いや、そんな感じじゃなくて、その残滓ってホコリみたいな感じに視えるみたい。それで場所によって濃い薄いがあって、濃いところだとちょっと気分が悪くなる、みたいな」

「はっきりくっきり視えるわけじゃないのね」

「うん、そうみたい。少なくとも僕の、僕らの知人のね、Kさんっていう方ですけど。その人はそう言ってました」

「なるほど」


「で、視える人達の間で『幽霊が全くいない場所』がある、って噂が広まっているみたいで」

「その『幽霊』っていうのは、魂の残滓も含むわけね?」

「そう」

「聖域みたいなところでも、全くない、ってことはないの?」

「ないって言ってた。聖域みたいなところでも、多少の残滓はあるみたい。ほら、それ自体は悪いものじゃないから」

「なるほどね。で、そんな何処にでもある魂の残滓すら、全くない場所がある、と」

「そうなんですよ。ただ、Kさんも僕も色んな人に聞いてみたんですけど、それが何処なのかがわからなくて」

「ネットとかSNSで検索しても出てこないんだよね?」

「はい。視える人達の中では有名な噂らしいんですけど、あくまでも口伝てっていうんですかね。ネットには出回っていない噂で」

「ちなみに僕も知り合いに聞いてみたんですけど」

「どうでした?」

「残念ながら、既読スルーでしたね」

「それは怖い話ですね」


「それで、前回は視聴者の皆さんへ情報提供をお願いしたんだよね?」

「はい。前回の生配信と、その後SNSの方で情報提供を呼びかけまして。結果的に、いくつかDMをいただきました」

「えー、すごい。ありがとうございます」

「ありがとうございます。それで、まあそれぞれの内容を今精査してるところなんですが、ひとつ気になる情報がありまして」

「え、なになに?」

「『幽霊が全くいない場所』では無いんですが、『除霊の家』っていうのが北関東の方にあるらしくて」

「『除霊の家』? 聞いたことないなあ」

「皆さん、知ってる方いらっしゃいますかね……ああ……いないかな。いないか」

「詳しい場所はわかるの?」

「はい。一応、その情報提供いただいた方から住所とかもいただきまして。僕の方で色々調べてみたんですね」

「うん」

「で、その家、現在売りに出てるんですけど、そこを扱っている不動産屋さんをね、見つけまして」

「ほう」

「それで早速連絡してみたんですよ」

「さすが」

「情報提供者さんからお聞きした通り、その家は近隣では『除霊の家』とか『浄霊の家』とか呼ばれているらしくて。一部では、って感じらしいんですけど」

「あ、本当だったんだね」

「売りに出てもう20年以上経つらしくて。だから建物はけっこう傷んできてるみたいで、上モノと土地込みで、立地的にはかなり破格の値段で売りに出てるのね」

「それでも売れないんだ」

「そう。それで安いのにはもう一つ理由があって。建物の解体費用とか、家財等の処分は購入者に任せる、と」

「あー、そういう条件付きなんだ」

「ただ、その家っていうのが、入口から家の中まで御札とか仏像とかがいたるところにあるみたいで。それで買い手がつかないらしい。不気味すぎて」

「ああ……それは、ね。呪われそうだもんね」

「ね。まあ外観は、Googleマップで見た限りだけど、窓の内側から御札っぽいのが貼られているのがちょっと見えたり、何か入口辺りに仏像っぽいのが置いてあるのが見えるくらいなんだけどね。中はマジで凄いらしい」

「なるほどねえ。外観的には、そんなにヤバくない感じなんだ?」

「まあ、うん、そうね。だからそこまで大きな噂にはなってないらしい」


「その家ってさ、何か曰くとかあるの?」

「不動産屋の方が言うには、そういうのは全く無いらしい」

「え、ちなみに売り主さんは?」

「もともとの所有者だった方はもう10年くらい前に亡くなっちゃってて、今は甥御さんが一応所有してるみたい」

「その方も事情はあまりわからない?」

「これも不動産屋の方の話だけど、甥御さんも相続はしてるもののもともと所有者の方とは疎遠だったみたいで。だから、その家がどうしてそうなっちゃったのか、その辺の事情がわかる人はいないみたい」

「そっかあ」


「で、なんですけど」

「うん」

「ちょっと、その『除霊の家』に行ってみようかな、と」

「撮影に行くってこと?」

「はい。まあ行ってみてお蔵って可能性はもちろんあるんだけど、何かね、その、何でそうなっちゃったのか? みたいなのが、行ってわかれば面白いな、と」

「ああ、アンテナに引っかかる感じなんだ。オカルトアンテナ」

「それで、ちょっとこれはまだこれから確認する感じなんですけど、可能であれば、Kさん。Kさんも同行していただいて」

「Kさんも? ゲスト出演てこと?」

「いや、出演は、その、まあご本人次第ですけど。そのね、そこがもし『幽霊が全くいない場所』だとしても、僕ら二人では判断出来ないじゃないですか」

「ああ、そうね。僕ら視えないから」

「そう」

「え、ちょっと待って」

「はい」

「そのさ『除霊の家』については面白そうだし、怖いし、撮影に行くのは全然問題ないんだけどさ。カズくん的には、そこが『幽霊が全くいない場所』の可能性が高いと思ってるの?」

「高いかはわかりませんけど、あるな、とは思ってます」

「いや、確かにね、可能性はあると思うけど。今こうしてね、情報を聞いた限りだと、僕はあんまり……」

「わかります。確かにね、ここまでの情報だと、視聴者の方もね、そこまでピンとこないとは思います」

「あ、何か追加情報ある?」

「不動産屋の方が、僕らのことを知ってくれていたみたいで。色々話を聞かせてくれたんですけど」

「ありがたいね」

「その甥御さん、甥御さんが相続された時に、当時担当だった方──もうご退職されてるそうなんですけど──と甥御さんとで、一応家の中を見て回ったらしいんですよ」

「ああ、はいはい。そうだよね。うん、それで?」

「それで、その時に、不気味なメッセージを見つけたんだって」

「メッセージ?」

「何処で見つけたのかは、その、元担当者の方は教えてくれなかった。ていうか具体的に話すのをわざと避けてる感じだったみたいなんだけど」

「うん」

「家の中のある場所に、こう、紙が置いてあって。そこに平仮名で『ここにゆうれいはいません』って書いてあったんだって」

「……ええ? マジ?」

「甥御さんはあんまりその家に関わりたくないみたいで、その辺の話はちょっと聞きづらいみたいだから、それ以上詳しいことはわからないんだけど」

「『ここに』なんだっけ?」

「『ここにゆうれいはいません』」

「ああ、だから……だからここが『幽霊が全くいない場所』の可能性があるんじゃないか、と」

「はい」

「いやあ、これは……ちょっとゾクッときた」

「なのでね、ちょっと、これから色々許可取ったりして、来月中にはどうにか予定を合わせて行ってきたいな、と」

「オッケー、オッケー。了解です。いやあ、楽しみだね」

「甥御さんは管理は完全に不動産屋さんに任せてて、担当の方は、僕らであれば特に撮影問題ないみたいな感じで話されていたので。視聴者の皆さんはね、是非、ちょっと楽しみお待ちいただければと」

「はい」

「それでは、ヨモツヒラサカchのカズヤと」

「タクミでした」

「バイバイ」


(映像終了)

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