第3話
あると、言い切れないように。ない。とも言い切れない。
確かにそうだ。
目に見えるものや形あるものだけが全てではないのだ。
私は家に帰るといつものように母とテレビを見ながら夕食を食べて、お風呂に入って自分の部屋に戻る。
こういう、当たり前の生活のなかで……あり得ない事が起こりうる可能性はどのくらいあるのだろうか?
スマホが鳴って、液晶に友達の念を押すようなメッセージが浮かぶ。
『明日11時、了解』
と、事務的に返事を返して、画面をスワイプして『桃山台動物公園』と入れる。
ホームページのトップには、この動物園の有名キャラなのか『ツキノワグマのツッキーくん』が映る。
「ツッキーくんて……アルパカもぐもぐタイム? 仲良し広場……ハムスターとか、うさぎが触れるんだ。へえ」
動物は嫌いじゃない。小さい頃は獣医になりたいなんて思ったこともあった。
そういえば、将来の夢を聞かれると獣医や、飼育員と答えていたのに、いつから『なし』と書くようになったのか?
時々見るあの夢の話を、下らない妄想だと言われるようになってからかも知れない。
ううん、たぶん。そうだ。
夢を話すと笑われるのが嫌で、将来の夢も言えなくなっていったのだ。
それから、動物園は行っていないし水族館も行ってないと思う。
「小さい頃は夢は何だとかいってたけど、勉強しなきゃ何にもなれないのよ」
母はそう言った。
何になりたいかもわからないのに、何を勉強すればいいのだろうか?
そう思いながらとりあえず、困らないようにだけ勉強をした。
今でも判らない。
皆が進路を決め始めているというのに、大学へとりあえず進むのか、専門に行くのか……でも、どの分野に進めばいいのか決定できないのだ。
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