鯨外

 大きな鯨に愛を歌った。

 港町の歌姫が、沖へと向かう船の上で。

 雄大な海を自由気ままに泳ぐ姿に、まだ少女だった頃を思い重ねる。

 今の自分には程遠い。

 もう戻れない在りし日の話。

「鯨さん、鯨さん。私をどこかへ連れて行って」

 大きな鯨は何も答えず。

 月の夜に恋を歌った。

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