序章

第5話

月夜のバトンタッチ


「もう帰らないとなりません。」

観世(みよ)は、私の服の袖を持って悲しそうに言った。桜マンションの6階の突き当たり、私の部屋から見える空は、星が綺麗に白く光っている。午後5時24分、高校が終わると観世は、グレーのコート(学生指定じゃないやつ)をはおり、駅の階段を二段飛ばしに駆け上がり、水越まで220円で、私の部屋に来る。隣のビルの3階で、雑貨喫茶店【キラシルン】を経営している私は、今年二月にアルバイト雑誌に記事を載せた。観世は、締め切りすれすれに応募してきた。仕事は販売した物をノートにつけてもらう、一週間毎に集計をとるので、土曜の閉店後に私の部屋に来てもらう。週1で1200円(交通費)+700円。売れ残ったケーキなどを食べたり、試験勉強したりする観世をぼんやりと眺めて、7時頃まで、時間を過ごす。

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