プロローグ

第1話



「まま、このひとだぁれ?」




無垢な瞳が、あたしを掴む。




その小さな手のひらの中にある褪せたポロライドを受け取って、あの頃のあたしの隣にいつも居る、あなたを親指でなぞった。




写真の中で眠るあなたは、いつもどんな時だって、一瞬であたしの時計を巻き戻す。




「この人はね」



不思議そうに覗き込むその顔に優しく微笑むと、半月状に形を変える無垢な瞳。



「ママの、大切な人だよ」



十七歳のあたしと二十歳のあなたは、姿かたちを変えることなく、見飽きた紙切れの中で寄り添っては眠る。

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