第499話

駆け寄った菅田悠は、東雲葵を抱き起こし、腫物を触るように傷を確認する。



それを横目にその辺にナイフを放った奏は、呆然とゆいかちゃんたちを抱えている組員たちに命令を下した。



「ここへ下ろせ。乱暴にしやがったら首を切り落とす。」



「「「「「ッッ、」」」」」



息を呑んだ組員たちは素早く駆け寄り、奏の前に2人をそっと下ろした。



奏がすかさずゆいかちゃんを引っ張るも、蓮の腕の力は一切緩むことはない。



傷だらけの蓮と、無傷のゆいかちゃん。


そして緩む事の無い蓮の拘束。



それは蓮が命がけでゆいかちゃんを護った証でもあった。



奏はそれを見下ろすと、一言、



「そいつら、始末しろ。」



ゆいかに触れていた。



そう続け、鋭い視線を残りの5人へと向ける。



それに従ったのは、鉄。



鉄が一人一人沈めて行く間、奏は目を細めてゆいかちゃんを抱きしめる蓮を見ていた。




そして最後の1人が沈んだ頃、



「・・・いい加減、起きろ!」



蓮の頭に、普通に蹴りが入った。




「痛そう。」



思わず呟く。



「・・・・は?」




漸く蓮が意識を覚醒させた所で、今回の抗争とは呼べない、茶番劇は幕を閉じた。

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