第56話

「律。おはよー。この間のおかし買ってきたよ。」



おかしいなと思いつつも、律に声をかけておかしを差し出す。だけど、おかしは律が受けとることもなく、はたき落とされてしまって。それも、律本人に。


目の前の状況に混乱してしまって、私は床に落ちたおかしを見つめることしかできなかった。



ぐしゃり。おかしが踏み潰される。



「要らない。」



そう言った律の声は震えていて。そのまま教室を出ていってしまう。彼は、一度も目を合わせてくれなかった。



「あの、美音?」



呆然と律の出ていった方を見つめている私に、クラスの友達の理沙りさが話しかけてくる。



「今彼に近づくのは、不味いんじゃない?」


「…どうして?」



聞き返した私に、理沙は困ったように笑って、私に自分のスマホの画面を向けてくる。


そこに書かれていたのは…。

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