第4話 主人公モエから見た、アムダ君
──ワタクシの魂は震えていた。
『なんて、美しいんだ』
アムダ君のエレフォンから飛び出した【黄金の機械仕掛けドラゴン】。教室の中から眺めていただけだが、分かる
『あれは人智を超越した強さを保有している』
「──ジガァ▪️▪️!!!!!!!!!!!!!」
ぞく、身の毛がよだつ。あのエレモンがこちらに対して咆哮をした。それだけで失神をする生徒もちらほら見受けられた。
ワタクシが無事なのは、常にお父様のエレモンなどを見れているからだろう。ある程度なら、強いエレモンを見る機会がある。
──だが、あれは例外だ
あのエレモンだけは絶対に例外中の例外。下手なことはできないだろう、彼をいつも馬鹿にされていた生徒も小刻みに震えている。
分かっているんだ。同じ大地に立つ者としても、格が違うことに。
ビリビリ来る……
「も、モエちゃぁん」
ん? 隣に立っている【チカ】が腰砕したように地面に座っていた。ちょっとだけ涙目になっている。
「お、おしっこ、も、漏れちゃった」
「……ワタクシにそれを言ってどうしろと?」
「あ、あのさぁ、変えのパンツとか」
「無いですわね」
チカはワタクシのシリアスな雰囲気を返して欲しい。あと、勝手に手を繋いでくるのはなぜ?
「漏らしたの一人だと寂しいじゃん……」
「手を繋いでも漏らしたのは貴方だけですわね」
「手を繋いだら友達……一心同体じゃん!」
「漏らしてここまで開き直れるなら、一人でも良いのでは?」
そんな会話をしているうちにアムダ君は【黄金の機械仕掛けドラゴン】に乗った。そのまま、空へと飛んでいった。
「まじか! なんてスピードだよ!! もう見えないじゃん!!!!」
【ラリラ先生】はとんでもなくテンションが上がっている。確か、【博士】でもあるからだろうか。未知や探求に異様な拘りを持っているのが博士らしいから。
「ほぇぇぇ!! すっげっぇえぇぇぇ!!!」
ラリラ先生、いつもとキャラが違うような気がするんだけど……まぁ、いいか。寧ろ、生徒相手に素を出せる訳がないだろうし。
エレ塾卒業の日に、あんな凄いのを見れるだなんて。運があると判断するのが良いんだろうか。
「チカ……ワタクシはもうこの教室に用はありませんの。先に行きますわ」
「ええ! 置いてくの!!」
「えぇ、ゴッドリーグを目指すので、嫌ならついてきてください」
「もぉ、しょうがないなぁ、ボクが1番になるけどねぇ? 逆に大丈夫?」
漏らしてるのに自信満々なのはどういうことなのだろう。幼馴染なのにわからない。
こうして、ワタクシはこの塾を後にした。
クラスメイトはもう、会うことはないかもしれない。会ったとしても、相手にならないだろう。
ラリラ先生が彼の能力を見抜いたように、得意的な才能があれば彼の才をすぐに見抜ける。
このクラスでは誰も見抜けていなかった。
◇◇
「うわぁ……裏垢特定されちゃってる。どうするべきか」
「むっしゃ!」
困っている俺の目の前にいるのは【武者マル】と呼ばれる火系統のエレモンだ。エレモンには【系統】と呼ばれる属性のようなものが付与されている。
十種類の系統が存在しており、互いに不利や有利が存在しており、それが【エレモンバーサス】においても重要な役割と担っていた。
「むっしゃ!!」
「おお、凄い炎」
武者マルは、ちょっと太っている猫が兜をかぶっている可愛らしいエレモンである。毛並みは白と赤の二色、猫じゃらしが刀身の刀も保有している。
【火系】はフレイムエレモン系とも言って、炎を操るエレモンが多い。エレ塾で俺が使っていた【ブラックトカゲ】も【火系】だったな。
更に言えば、この武者マルは【主人公】が最初に貰うエレモンなのである。1番最初のシリーズ、隣に座っていた【モエ】が主人公の作品だと父親【グレン】から貰って旅が始まる。
だからこそ、今頃、モエは貰って旅をしてるんじゃないだろうか。
「ああ!? なんかめっちゃDM来てる……」
【初めまして! 博士をしておりますルックと申します。ぜひ、アムダ君のエレモンを研究をしたいと思って連絡しました。つきましてはぜひ我が研究所に!! クッキーを用意させてもらいます】
「誰がクッキーで釣られるか!!! いや、行かないから! なんでクッキーで俺が行くと思ってるんだ!!」
【初めまして! 博士をしております、ルイルイと申します。ぜひ、アムダ君の未知のエレモンを研究させてください! 本当にちょこっと、先っちょだけ!! ケーキを用意しています】
「だから、お菓子じゃ釣られないって」
【初めまして、和菓子を用意してお待ちしています】
「博士って全員がこんなのでテイマーを釣ろうとする連中なのか! ゲームでは知らない名前の博士もあるし」
そう言えば学会はあるって聞いてたけど、実際にどんな感じなのかはゲームでは触れられないで終わったな。
知らない博士の名前が沢山あるし……ん?
【初めまして。我々は珍しいエレモンを売買する『ハンティングギルド』と申します。今回はアムダ君にある相談があります。『以前の黄金の機械仕掛けドラゴン』を我々に売ってくれませんか? 金額は2億まで出せます。検討をお願いします】
ああー。こんな奴らもゲームで居たなぁ。『ハンティングギルド』珍しいエレモン、と言うか【高ランク】のエレモンを売買する連中だ。
全シリーズを通して出てくる敵だ。メインのストーリーって言うよりはDLCコンテンツとかで出てくるイメージだった。
本当に居るのか……まぁ、売らないけどね。ゲームでもイベントでエレモンを譲って欲しいみたいな事を言う奴だったけど、あげないわ
『ハンティングギルド』は高ランクエレモンを捕まえるから、メンバーもまぁまぁの強い奴らが揃っている(廃人環境、ネット対戦で勝てるとは言ってない)
高ランクと言ってもAランク以上専門だったか。他にも珍しいエレモンを狙う組織とか、捕獲して売る団体もあったけど『ハンティグギルド』が1番印象が強い。
エレモンにはランクがあって、【E】、【D】、【C】、【B】、【A】、【S】、【G】、【L】まで存在している。
ランクの違いは単純な珍しさ、凶暴さ、強さを表している。他にもレベルが一つ上がるごとのステータス上がり具合が違う。レベルマックスまでの必要経験値も違う。
「むっしゃ!」
因みにめっちゃ可愛い【武者マル】は【D】。下から数えて二番目だ。まぁ、育て上げてるから【L】にも勝てるけど。隠しステータスを振っていたりもするしね。スキルも強化しているし
「うーん、『ハンティングギルド』に目をつけられたら厄介ごとに巻き込まれそうで困るなぁ。普通に改造とかしたエレモンを差し向けてくるし。ゲーム時代に武者マルも戦ったことあるよな?」
「むっしゃ!」
そう言えば【ジークグラモン】、【武者マル】とかゲームの時の記憶が残っているらしい。
不思議なことだが……俺の姿が【ライバル枠】になっているのに俺だと分かるのか?
「武者マル、俺昔、男版主人公の姿で冒険したの覚えてるか?」
「むっしゃー」
「ふむ、そうか!」
うむ、なんて言っているのかわからん! ただ、懐いているってことは覚えているってことだろう。
折角なので、頭を撫でることにする!
「むしゃ!!!」
うむ、兜をかぶっているから手触りはなんとも言えない。今度は肉球とかを触ったが、めっちゃぷよぷよしている。
これ、これがエレモンの手触り!? しかも、昔育てたエレモンだぞ。もう、これで終わっても良い……
いやよくないよ!!!
「へへへ、可愛い」
武者マルといちゃいちゃしていると……俺の脳内に言葉が直接響いた
『ちょっと、アンタ! そろそろアタシをエレフォンから出しなさい!!』
俺のエレフォンから、無理やり出てきたのは狐のような姿のエレモン。どこか高貴な風貌をしている銀色の狐だ。
大きさな武者マルと同じくらいで50センチほど。
──ランクは【Lランク】
想像が空想上と言われる伝説級を示すのが【Lランク】、その中でも
系統『未知系』オメガエレモン系とも言われる上澄の最高峰。神話に語られない、新たなる伝説と言われるエレモン
【クイーンフォックス】
テレパシーを使うことができるエレモンだ。彼女が気づけば俺の頭の上に乗っており、こちらに青い瞳を向けていた。
『クイーンである、アタシをいつまで待たせるのかしら!!』
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