朝起きて学校へ行きクラスの奴らと会話し授業を受け、放課後はそれなりに遊んで。高校生になってからはバイトに向かったり、と。基本的な日常が流れ落ちていく時間、そのやり過ごし方は、義務教育が始まった当初からほとんど変わらない。




何年も、何年も。

ずっと、変わっていなかった。





卒業式の予行演習が終わる。


暖かくどこかしんみりとしたホームルームも終わる。



それでも、帰りがたい雰囲気漂う教室内からクラスメイトが消えた、放課後。




下級生たちの部活もなく、静かな校内をひとりで歩く。




そして、目的の【図書室】へと足を踏み入れた。



貸し出しカウンターに座る、ひとつの小さな背中以外は、誰もいない。まあ、放課後ならいつもの光景だった。




世間でも人気の作家の新作が立ち並ぶ手前から、地元の歴史書が並ぶ奥の奥まで、ゆっくりと見渡していく。





深く視界を閉ざして、ひとつ、大きく深呼吸。




ここも最後か、なんて。いちばんのお気に入りの場所だった図書室を満喫するために、足を進めた。








ふと、気配を感じたのか図書委員なんだろうひとりが振り返る。

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