スナック小説集

理性

【ホラー 味】インコンビニエンスストア

 僕がこのコンビニで働き初めて一ヶ月になる。

 最近は仕事にも慣れてきた。

 でも、やっぱり深夜帯はしんどいなー。


 「新人くんおつかれ〜」


 「あ、先輩、お疲れ様です」


 この人は先輩。見たところ30代真ん中くらいの女性だ。

 名札もないので、名前すら分からない。


 「新人くん、廃棄してくれた?」


 「しましたよ。先輩が汚すんで、大変でしたよ」

 

 先輩はごめんごめんとヘラヘラ笑う。

 何度このやり取りをしたものか。


 「でも、あれ廃棄でよかったんですか?」


 「いいのいいの、最近は厳しい世の中でしょ?昔みたいにそういうのに寛容じゃないのよ」


 そんな話をしているとお客が来た。

 客の男がいくつか商品を手に取り、レジに来ると、いつの間にか先輩はいなくなっていた。


 「おい、揚物ないのかよ」

 男は機嫌が悪いようだ。


 「すみません。深夜は販売してなくて、、、」

 レジの僕はそうこたえる他ない。


 「なんか在庫あるだろ。それ出せよ」


 「そう言われましても、、、」


 困った。また先輩に任せるしかないか。


 「ったく、なにがコンビニだよ。全然便利じゃねーじゃねえか」


 男は文句を言いながら電子決済を済ませると、ドンッと台を蹴って自動ドアへ向かう。


 「あ!お客様!」

 僕は焦って男を引き止める。


 「ああ??」

 片眉をつりあげてこちらを睨む男。


 「あ、あの、お客様、お客様は世の中に必要とされてますか?」


 僕は先輩が男の後ろに忍び寄るのを悟られないように男の目を見つめる。


 「はぁ??お前何言って、、、」


 男の頭部からゴンッと鈍い音がすると、男は静かになっていた。


 「あー、もうまた廃棄処分しないといけないですよー」


 「しょうがないさ。厳しい世の中だからね」

 そう言いながら先輩は商品に汚れが飛び散ってないか確認している。


 「先輩また汚したでしょー、他に方法ないんですか?締めるとか」


 そう言われて先輩はまたいつものようにヘラヘラ笑っている。


 そういえば明日は給料日だ。

 なんに使おう。


 そんなことを考えながら僕はゴム手袋をつけた。

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