第75話

次の日、Iさんと病院に行くとララにも会えた。




『ララ、頑張ったね』




ララを撫でる。





『帝王切開ですので、この辺りは毛を剃ってありますが、ちゃんと伸びますので。』




『はい。赤ちゃんは?』




『ララちゃんは母乳の出も良くて、飲ませてあげたいのですが、赤ちゃんの方が飲むのが下手くそで今はこちらで、ララちゃんの母乳を搾って飲ませています。』




『そうですか。見ることはできますか?』





『触れませんが、遠目で良ければ。』




そう案内されたのは、隔離されてる部屋の前。





ララと同じチョコレートタンだった。





遠目だし、赤ちゃんは寝てるみたいでちゃんとは見れなかったけど




可愛かった。



ララもあんな感じだったのかな?って思ったりしてた。






『可愛いね。ララちゃんと同じ色だね。』





『うん。』






そして、その後ララと少し会ってからIさんの家に向かった。






Iさんと色々話してる時だった。




動物病院からの電話。






凄く嫌な予感がしたのを今でも覚えてる。







そっか。

頑張ったね。







生きてる時に会えて良かったよ。




生きてる内に触ってあげたかったな。

生きてる内に名前を呼びたかったよ。






赤ちゃんを見てから数時間後、赤ちゃんが亡くなった。






ララと一緒に遊んでる姿が見たかった。



ララと一緒にお散歩をしてみたかった。




ララと3人で一緒に寝たかった。




ララのお母さんの姿が見たかったよ。



ララを少しの間でも、お母さんにしてくれてありがとう。




きみのイタズラする姿を見たかったよ。



きみをララと一緒に育てたかった。



きみにも好かれたかった。



きみにも甘えてほしかった。



きみを可愛がりたかった。




触れられなかったけど




名前も呼んであげられなかったけど




遠目でしか見られなかったけど




可愛かった。

愛おしかった。




生まれてきてくれて、ありがとう。

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