第12話 国王、お話があります
アンナ王妃は一度自室に戻り、国王にも長年にわたっての女遊びを金輪際止めるように嘆願書…いやこれは命令書と言ってもいかも知れない文面になっているものを書いた。
そして意気揚々と国王執務室の扉を叩いた。
ここは国王の執務室。
バーン!扉を開く音がして国王は顔を上げた。
「陛下。大切なお話があります。お時間を頂けるかしら?」
「アンナどうした。いきなり。私が忙しいってわかってるだろう」
国王のアルパーシは少し苛ついた顔をする。
「でもこれは最重要案件なの。あなたもアルフォン殿下の事はご存知でしょう?さっきソルティ嬢とフィアグリット夫人が見えたのよ。あなた、アルフォン殿下との婚約をこのまま続けろっておっしゃったんですってね。それって酷いじゃないんです?散々好き勝手に遊んでジャネット様を妊娠させて、それでも女は我慢するべきなの?こんな横暴な話があるとでも?すぐにアルフォン殿下とソルティ嬢は婚約解消するべきです。アルフォン殿下をここに呼んで頂戴。あなたが言えないなら私がはっきり言いますわ。やったなら責任を取れって!それに国王であるあなたにも責任があります。あなたもいい加減女遊びはやめて頂けません?私はもう我慢の限界ですわ」
アンナはこんなに興奮したことがないくらい興奮していた。
だって、今までずっと我慢して来たのよ。
国王とは政略結婚でどの国でも王に子供が出来なければ側妃を娶る事もあることはわかる。
でも、私は王子を産んでいるし王女も授かった。なのに妊娠が分かった途端王は次の王妃を娶った。
欲の解消が必要だとか何とか言って…妊娠期間中は安全を最優先に夫婦の閨事はなしになった。
まあ、それはわかるけど…でも私はいやだった。
そんな事を言ってはいけないとずっと我慢して来たのだ。第2王妃や第3王妃とは事を荒立てないようにはしているが、はっきり言っていい気分ではない。
女なら誰でもそうだと言うはずよ。
それにもういい年なのに、まだそんな事をする王にはいい加減愛想が尽きかけている。
こうなったら言いたいことを言ってやりたいのよ。
「アンナ言いたいのはアルフォンの婚約の事か、それとも私への不服か?どっちなんだ」
「両方です。まったくあなた達の下半身はどうなってるんです。女と見たら誰でも食いつきたくなるの?そんなだから…もう!これからは女遊びはやめるって約束して下さい。そうでなければ私は…」
アンナはきつく唇を噛みしめる。
国王の怪訝そうな顔つきが分かった。
目を細め目尻にしわを寄せて嬉しそうな顔をしてアンナに近づいて来る。
アンナの腰にいきなり手を伸ばしてアンナを引き寄せて耳元で囁きもう片方の手はそっと頬に触れて来る。
「わかった。アンナお前はそんなに嫉妬するほど私が好きなんだな。ああ、君はいつまでも美しい。いつだってアンナお前を愛してる。今夜は君の所に行くとしよう。最近はずっと放っておかれて寂しかったんだろう?私が悪かった。さあ、機嫌を直してくれ」
「陛下。離れて頂けます?」
アンナは一言そう言うと国王から大きく大きく距離を取った。
「まったく、何をおっしゃるのかと思えば…誰が貴方を好きだと?気持ち悪いですわよ。それも良く揉まぁ…白々しいそんな猫撫ぜ声で…そんな子供だましが通用するとでも?いいですかアルフォンはジャネットと結婚させます。もし断ればマリーは黙っていないでしょうね。それに王妃、王子からの嘆願書も見ておいて下さい。これは私からの分です。そしてこれが最後の通告になりますから。これでも懲りないようなら私にも考えがあります。いいですね?」
アンナはそう言うとじろりと国王を睨みつけた。
国王がそれを見て驚いた顔をした。
国王は今までアンナがこんなに怒ったのを見たことはなかった。
アンナはくるりと向きを変え、そして扉を来た時の倍の強さで閉めた。
国王の部屋には”バーン!”と大きな音だけが響いた。
嘆願書を見た国王はそれを見て苦虫を嚙み潰したような顔をした。
【第一に付き合っている女とはすべて手を切って頂きます。これからは王妃のみ、それも私以外とベッドを共にすることは許しません。いいですかあなたは私の夫なのです。妻が反対の事をしたらあなたはどんなお気持ちかしら。いい加減その下半身に何かしら手を打つべきなのですか?もし約束を束えたら私は行動に出ます。この次やるときは覚悟を持ってやって下さい。あなたの下半身がどうなっても知りませんから!!】
これを私に?
無理だろう…でも、約束を守らなかったらどうなるんだ?
国王の脳内は下半身の心配でいっぱいになった。
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