ヤキモチの矛先には。

ヤキモチの矛先には。-1-

「…先輩って、たまに嘘つきますよね」



小さめのカップに注がれた珈琲を口にしながら、愛花が呟く。



「…ん?」



その話題の唐突さに、思わず清佳の眉が上がる。



「あれってどういう」


「貴方の前で、嘘なんてついてたことあったっけ?」



今度は、愛花が目を丸くする番である。



「…うわ、白々しい」


「何でそうなるのよ。今日もこうやって、開けっぴろげに、話してるじゃない」



軽く身振り手振りを交えながら、無罪を主張する清佳。


愛花は、唇をとんがらせ、呟く。



「プライベートじゃないですよ」


「あら、そう」


「仕事の話です。社長の前で、飄々とついてるじゃないですか」



しばし、清佳の時が止まる。


次いで、おもむろに腕を組む。



「…ちょっと心当たりがない」


「…ええ」



特に演技でもなさそうな清佳の表情。


愛花は、少し引き気味に、

怪訝に反応してみせた。

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