失恋の定義とは。
失恋の定義とは。-1-
そのカフェの売りは、
見晴らしの良い、大きな窓。
「間違いないですって」
その窓に、一番近い特等席に、女性が二人。
「そんな雰囲気、全然ないと思うけど?」
「先輩の目は節穴ですかね」
と、先輩に対して不遜な言葉で返した女性、
愛花(まなか)。
後方で一つにまとめられた、黒髪のロングヘアを何度も触りながら、口を膨らませる。
「…貴方、最近妙にトゲのある言い方してくるじゃない」
愛花の言葉を至って冷静に返す、
先輩と呼ばれた女性、清佳(さやか)。
緩くウェーブがかけられた、暗めの茶髪のショートヘアを指に軽く巻きつけながら、愛花の表情は軽くスルー。
「元々こんな性格なんです。良かったですね、本当の私に出会えて」
「マスター」
あっけらかんとした顔で言い放たれた言葉を軽くいなすかのように、清佳は片手を挙げる。
その所作は、着こなされたブルーのパンツスーツと相まって、さり気なくスマート。
「ちょっと、何で呼ぶんですか」
「そんなに気になるなら、貴方が直接本人に聞けば良いじゃない」
意地の悪い笑みに呼応するように、愛花は、厳つい顔を浮かべる。
身に纏うグレーのスカートスーツにはチェック柄が入っており、表情との対比が鮮明になる。
その様子はさながら、縄張りに入ってきた侵入者を、威嚇する猫であった。
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