第43話
あたしは翌日も準備運動をした。
コンラッドさんはまた刃を潰した剣を持ってきてくれる。けど視線が気になってそちらを向いてしまう。
視線の主はあたしの対の光の神子であるアルブレヒトさんだ。彼はじっと見つめて動かない。まっすぐにけど鋭い視線であたしは緊張していた。
「……巫女。大丈夫ですか?」
「……大丈夫です。今日もよろしくお願いします」
あたしが答えるとコンラッドさんは困惑しながらも剣を手渡してくれた。受け取ると昨日と同じように構える。ブンッと振った。素振りを始めたのだった。
今朝の事を思い出す。いきなりアルさん――アルブレヒトさんがあたしの部屋にやってきたのだ。そうしてこう
『……ミヅキ。今日は私も剣術の稽古に付き合うからな。そのつもりでいろよ』
あたしは驚き過ぎて言葉が出ない。アルさんはそれを了承と受け取ったようだ。『ではな』と言ってそのまま出て行ってしまった。まるで台風一過のような一時だったな。ぼんやりとしながらも素振りを続ける。
「……巫女。上の空でしていたら危険ですよ」
いつの間にかすぐ近くにコンラッドさんがいて驚いてしまう。あたしはとっさに刃を潰した剣をおろして素振りをやめた。
「……コンラッドさん。驚かせないでください」
「すみません。何度か声はかけたのですが」
「……あ。そうだったんですか。すみません」
あたしが謝るとコンラッドさんは苦笑する。不意打ちだったのでさらに驚いた。
「いえ。今日はここまでにしましょうか。体調が悪いのでしたら無理はなさらないように」
「わかりました。お疲れ様です」
あたしがお辞儀をして言うとコンラッドさんは不意に肩を手を置く。軽くポンポンとされる。
「ええ。お疲れ様です」
「……失礼します」
あたしはもう一度お辞儀をした。そして鍛錬場を後にしたのだった。
アルさんと共に自室に戻る。だが廊下を歩いている間、彼は無言を貫いていた。あたしは気まずい中、ただ足を動かすのみだ。仕方ないので渡り廊下では庭園や空を見たりしながら黙々と歩く。やっと自室にたどり着くとシェルさんが出迎えてくれた。
「ミヅキ様。鍛錬は終わったのですね」
「うん。もうお昼だよね。お腹空いちゃったよ」
「……わかりました。すぐに食事をご用意しますね」
あたしはありがとうと言って笑った。けど隣にいたアルさんは面白くなさそうな表情になる。シェルさんが部屋を出るのと入れ違いにあたしは自室に入った。ソファーに座る前に汗を流そうと浴室に向かう。アルさんは何でかそのまま入ってきた。
「……アルさん?」
「……湯浴みをするのだろう。私は待っている」
「わかりました」
仕方ないので頷いておく。急いで着替えを取りに行ったのだった。
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