第27話
奥の間に着くとアリアさんは出ていく。
代わりに神官長が応対してくれた。
「巫女。それにアル殿下。よく来てくださいました。今日は妖魔や魔王の事で話がありましてな。それでこちらにお呼びしました」
「神官長。妖魔で何かわかった事がありましたか?」
「……はい。実は私や若い神官達で秘かに調査を致しましたところ、アルシンの町、シェンクの町が特に妖魔の被害が酷いとわかりました。魔王も現れており王宮の地下迷宮からも強い魔力が感じ取れた次第です」
アルさんと神官長は難しい顔で黙り込んだ。
魔王に妖魔か。
まるでRPGやファンタジー小説に出てくる単語にあたしはここは異世界なんだと改めて実感した。
岬さんにまた話を聞かせてもらわなければならない。
そう思っていたら神官長はあたしに真摯な顔で告げた。
「巫女。まだ、あなたは完全に力を制御できてはいませんが。半月後にはアルシンとシェンク、他の妖魔が出没する町や村を巡って頂くことになります。そのためにも月玉の力を貯める事のできる魔石を渡しておきます。スー、こちらに」
神官長が呼びかけると黒髪に黒い瞳の小柄な女性が奥の間のドアを開けて入ってくる。
スーというらしい女性は両手に収まるほどの黒い箱を持っていた。
「……月の巫女様。こちらが神殿に伝わる魔石です。百年前の巫女様がお作りになった物になります」
「へえ。すごいですね。月の巫女って魔石を作る事もできるんですか?」
「いえ。正確にはこれ自体も魔力を持つ石です。月の巫女様が当時の神官長と共に試行錯誤の末に作り上げた物だと聞いております」
あたしは百年前の月の巫女に感嘆した。
まさか、魔石に力を乾電池みたいに貯める事を思いつくとは。
もしかしたら当時の巫女も現代人だったのかもしれない。
しかも日本人。
けど、魔石をいわゆる加工するのって錬金術と関係しているとか元の世界で聞いた事がある。
「あの。神官長。聞きたい事があります」
「何でしょうか?」
「……えっと。こちらの世界にも錬金術ってあるんでしょうか?」
あたしがおずおずときくと神官長は少し目を見開いた。
「……ほう。錬金術をご存知でしたか。確かに百五十年程前に異国で始まり他国にも伝わりました。百年前の月の巫女も錬金術に興味を示して自身の知識と神力を生かし、幾つかの魔道具を作りました。先ほどお渡しした魔石もその内の一つです」
「そうだったんですか。百年前の巫女は錬金術に興味を示して色々と作ったんですね」
そうですと神官長は頷いた。
スーさんはあたしに近づくと黒い箱を開けてくれる。
中には赤い台座に鎮座する白と銀の混じった燐光を放つブレスレットがあった。
ブレスレットには一定の間隔で白い宝石が連ねてある。
銀の華奢な鎖で留め金の部分にも白い宝石がありとても上品なデザインだ。
スーさんはあたしに手に取るように勧める。
ブレスレットを取るとしゃらと微かに音が鳴った。
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