第68話
「…キレイ…、」
コトバが勝手に、口をついている。
「…ふふ…なんすかー、それー?起き抜けに、いっぱつめに放つ、コトバっすかー?」
少し、首を傾げて、気怠い雰囲気を纏っている。
その返答だけ、で。
普段から、言われ慣れているんだろうな。
容易に想像ができる。
「…伊織、くん…」
くちびるから勝手に出た、その名前、は。
月明かりに溶けてしまいそうな、儚さをはらんでいる。
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