第48話
ふたりで、アパートを並んで見上げている。
「2階、っす、ね」
彼が指を指している。
「…あの…、ほんとうに、ありがとうございました」
言いながら、スーツケースを受け取るために手を伸ばしたけれど。
「いやいや、中まで運びます。階段、危ないでしょ」
さっ、と、スーツケースを引っ込められた。
「…いや、で、も…」
「いいからいいからー、はい。昇りますよー」
もう、階段を昇っている、背中。
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