第14話

清貴の部屋、二人はパンパンに膨れ上がった冷蔵庫の前に並んで佇んでいた。




「これ、どうするんだ?」




二人はちょっぴり困った様に顔を見合わせる。




「私たちって、ことごとく食べ物の好みが違っていたのね」




半ば呆れ顔で、呟く早苗。




「そうだな。一歩ずつ譲り合っての夫婦とは、よく言ったもんだ…」




「ホント、全く違う環境で育った赤の他人が、同じ一つのものを食べるんだもの。夫婦って凄いわ…」




早苗が沈んだ面もちで清貴を見上げる。




「ねぇ…私たちって…」




「シッ」




清貴が早苗の言葉を指で押しとどめた。




「料理を作ろう。お互いの一番好きな料理を…」




早苗は不安げに清貴を見上げた。清貴は優しく微笑むと言葉を続けた。




「そうして、交換して食べよう。俺達はきっともっとお互いを知る必要があるんだ。お互いの一番好きな料理を味わうように…」




「ええ」




早苗は少し笑顔を取り戻して調理に取りかかった。

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