重なり合う傷

第34話

side 妃響



俺は、寝てしまっていたのか。


周りが騒がしいことに気付いて

目が覚める。



何かあった?妃愛…は?




燈妃:「ひびきっ!ひびきにいっ!」


妃響:「何、騒いで何なんだよ。」




普段、冷静な燈妃が大声で

俺を呼んでいる。



妃愛絡みだ。


妃愛に何かあったんだ。



昨日……居間で、母さん……や

妃愛の事件………優哉さんのこと…

話していたら、突然倒れた妃愛。


何度、呼び掛けても、摩っても…

目を開けることはなくて。



死んでしまうのではないか…

そんな、恐怖を味わった。



急いで病院に連れて行って

検査をしてもらって

目を覚ました、妃愛が俺に言った言葉は




何で、見捨ててくれないの!


お母さんを奪った私に

なんで、関わるの!!


死にゆく人間に構って何になるの!


ひいくんこそ、あっくんを追い掛けてる!


私は…私はあっくんではないっ!




妃愛から何度も言われてきたことなのに




いつも以上に

胸に突き刺さって

痛かった。




自覚はしている。



俺は、朝妃を追い掛けている。




妃愛に朝妃の姿を

重ねてしまって見ている。



朝妃は朝妃。


妃愛は妃愛なのにな。




俺のエゴなんだ。


朝妃の代わりに妃愛を護る。

それで、満足していた。



妃愛の為にではなく


自分自身が満足したいだけなんだ。

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