第654話
『悠太たちにはもう言ってあるから。』
『なんて。』
『あとで来てって。』
『おまえ。』
兄貴の怒りのバロメーターがどんどん
上がっていって空気が凍りついている。
だれか、言葉を発してください。
この空気をどうにかしてください。
『みんな、久しぶり!!』
『久しぶりだなぁ。相変わらず
希美ちゃんは綺麗だねえ。』
『そんなことないよ、あきぱぱ。』
『そんなこといってえ。』
幼なじみである、希美ちゃんは
娘のいない親父にとって娘同然の存在だ。
兄貴と親父が疎遠でも、希美ちゃんは
子どもたちを連れて時々遊びに来ていた。
だから、親父は嬉しいのだろう。
親父が喜ぶたんびに、兄貴の皺は
増えていって、もうどうにもできない。
希美ちゃんお願いだからやめてー。
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