第89話

『ただいまぁ』


咲美の明るい声が聞こえる。

帰ってきたみたいだ。


最近はテストでもないのに

帰ってくるのが早い。


部活も入ってないみたいだ。



『おかえり』


動揺を隠していう。



『あれ?よしくんいたんだ!』



『今日は飲み会だからさ』



『また〜?体壊すよ』



『ほどほどにするよ。』



『そうして。そうして。』



普通の会話をする。バレてない。



『よしくん。』



『なんだ?どうかしたか?』


咲美が話しかけてくる。



『ちょっと海にいきたいの。

駅まで送ってくれる?』



『海?なぜに海?』


いまの季節は寒いじゃないか。

なぜに、海なんだ?



『んー、潮風あびたくて』



『海まで送ってやるよ。用意してこい』



『やった!ありがとう』


明るい咲美愛の声。

本当に脳腫瘍なのか?




なあ、咲美、俺は咲美が生まれてきた日から

ずっと娘のように思ってきたんだぞ。


はなしてくれないか?

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