第81話

『咲美ちゃん。なにかの嘘よ。

そう、嘘なのよ。他の病院で

みてもらおう?ね?ね?』


おばあちゃんが言う。



おばあちゃん隠しきれてないよ。


おばあちゃん動揺しすぎだよ。



どこの病院に行っても同じだよ。



でも、わたしは言う。


『他の病院いく』



うん、うんって言って泣いている

おばあちゃん。ごめんね。



お母さんが出産を決めたあの日から

おばあちゃんはなにを思って

いきてきたの?


わたしが生まれて、娘を失うなんて

思っていなかったよね?



全部、全部、わたしのせいなんだ。


わたしが生まれたことで

みんなが傷ついた。



そうだよね?そうだよね?



おばあちゃん、お母さんの仏壇に

泣きながら話しかけてるのわたしね

みたことあるんだよ。



『ごめんね、ごめんね。美緒菜

わかってあげられなくてごめんね』


小さくなった背を丸めて

仏壇の前で泣いていたよね。



『美緒菜、しあわせか?これが

お前が望んだ未来なのか?俺は悔しい

わかってやれなかったこと悔しい』


おじいちゃん、自分より先に

娘が天国にいくなんて思っても

みなかったんだよね。


わたしを通してお母さんを

みているの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る