第79話

あの日。倒れたあの日。



おばあちゃんの悲鳴が

私の耳に聞こえてくる。



おばあちゃん、足が動かないの。


おばあちゃん、何だか頭が痛い。


おばあちゃん、私、しぬの?



救急車の音がきこえる。


『わかりますか、わかりますか』


って、そんな声が聞こえるの。



病院に運ばれる。


80代後半のおばあちゃん。

泣かないで、泣かないで。



色んな検査を受ける。


少し気分が落ち着いてきた。



診察室に呼ばれる。


『脳腫瘍です』



ああ、やっぱりそうなのか。


このところおかしかったから。


なんとなく気付いてはいた。



だから、冷静に受け止められた。



おばあちゃん泣かないで。

おばあちゃんのせいじゃないよ。


私の生きる運命なんだよ。


これからどうしようか。



私は負けないよ。絶対に負けないよ。

だから私は悪女になるんだ。


弱い自分を隠すために。

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