第85話

わたしが話し始めた数分後、藍がため息をつく。




「んでこんな記号ばっか出てくんだ?」



「知らない」



「xとかyとかiとか…これ数学じゃねえのか?」



「…」



問題を解くのに必要な二次方程式を教えていると、そもそも数学の基本すら怪しい男が鬱陶しそうに呟くので、思わず言葉を失う。



至って基本的な数IIの問題だけど、どう考えてもこの問題を解くレベルに達してるとは言えない藍。



その手前から理解していないと出来ないこの問題は今の藍が簡単に解くことも出来そうに無いというか…。



よく分からないところを気にする男。



でもよく考えると、数学の話に英語が出てくるってのもおかしな話のような気もしてくる。



「数学だけど…。ねえ、今まではどうしてたの?」



「何が?」



「これ学校の課題でしょ? 今まではどうやって解いてたのかなと思って…」



数学の基本が分かっていなさそうな男にいきなり数IIの問題が解けるわけがなく。



今まではできていたのかどうかが気になり聞くと。



「やった事ねえよ」

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