第45話





「…何でもありません。」




首を振ってから、私は人の波をまた見つめる。






こんな風に誰かと一瞬にいて、居心地が良いと思ったのは生まれて初めてだった。





……だから、戸惑ってもいる。






何も知らない天野さん。





時々、天野さんが挨拶されている時に漏れ聞こえてくる“きょうさん”ってフレーズで、何となくせれが下の名前なんだって思ってる。





当たってるかどうかは勿論、私からは聞いてない。




…………年齢も天野さんが何者なのかも、私からはこれからも彼に聞くつもりもなかった。

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