花の芽生え

第1話



『本日のゲストは、今年、国宝級イケメンランキング1位にも輝いた〜!』



何インチというか分からないけど、見たこともないくらい大きな大きなテレビには、興奮気味な女子アナと、キラキラに装飾されたテロップが映し出される。



そんな大きなテレビの前で、とてもふかふかそうで、これまた大きなソファーに座る彼が、夕食の準備が終わり、声をかけようと背後に近寄った私の方を振り返った。



佐倉日向さくら ひなたさんでーす!!』



画面に映るのは、ぱっちり二重の大きな目、すっと通った鼻筋に、バランスのとれた桜色の薄い唇、陶器のような白い肌に、柔らかなそうなふわふわで明るい茶色い髪の、今をときめく若手俳優。



「あのーさえちゃん…」



''佐倉日向"がニコッと笑って白い歯を見せれば、スタジオのお客さんの黄色い歓声があがった。



「なんですか、桜陽おうようさん。」



目の前の彼は少し目を泳がせると、画面に映る満面の笑みより控えめに、困ったように笑った。



「さすがに奥さんの前で、これを見られるのは恥ずかしいから消していいかな?」



国宝級イケメン俳優と名高い、芸名、佐倉日向、もとい目の前に座る鈴木桜陽すずき おうようさんと、



「…別に構いませんよ。………それに、」



私、都内の高校に通う、鈴木冴花すずき さえか16歳は、




本日、




「私たち、利害関係が一致した契約結婚なんですから、恥ずかしがることはありません。」



「それとこれとは違うのー!」




結婚、の契約を、いたしました。



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