第12話

「なん、で…?」


思わず声がかすれそうになる。


「オレさ、今日貰った数…だいたい覚えてたんだ。記憶では確か十五個だったハズなんだ」

「………」

「これ、お前がくれたんじゃないの?」


その声にゆっくりと振り返ると。

植草の手には、さっき私が置いた小さな包みが乗せられていた。



「………」

「………」



思わず視線が絡み合う。


(何か…。早く、何か言わないと…)


植草に変に思われない内に。


「ば…バレちゃったか。それ、頼まれてた分ね。でも、良かったね。まさか…それが、決め手になるなんて…思わなかったけど…」


明るく笑ったつもりが、徐々に声が小さくなっていってしまう。


(あああ馬鹿バカーーーっ!これじゃ思いきり不自然じゃんっ!!)


自分に自分でツッコミを入れるも、もう遅い。


「高山…」


植草が微妙な顔をした。

そんな表情を見ていられなくて、


「とにかく…そういうこと、だから…」


それだけ言うと。

今度こそ笑顔で「じゃあ、帰るね」と向きを変えると、教室の扉へと向かった。



「サンキュ、高山。お前のおかげで決意が固まったよ」


後ろで植草の呟く声が聞こえる。


「告白する勇気、貰ったよ」


珍しく、真面目な声。


「…それなら、…良かった」


植草に背を向け、扉に手を掛けたまま私も呟く。



本当は複雑だった。

これから植草が誰かに告白する。

そんなの、知りたくもなかった。


(だいたい、何で私に相談なんかするかな…)


何だか無性に泣きたくなってくる。


(こんな気持ちになるなんて。…やっぱり、バレンタインなんかいいことない。大嫌いだ…)


いくら友人の為とはいえ、チョコを贈るなんてガラにもないことをするから。


(馬鹿だなぁ。私…)


浮かびそうになる涙を必死にこらえながら。

扉を開こうと手に力を込めた、その時だった。


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