第13話

「私自身を固定って…。例えば、どんな風に?」

「んー…?そうだな。ベッドに縛り付けておくとか?」


思わず浮かんだことをそのまま口にすると、紅葉がとても嫌そうな顔をした。


「やだ。圭ちゃん、コワイ…」

「ぷっ…」


その顔に思わず吹き出した。


「嫌だな、冗談に決まってるじゃない」

「もうっ。圭ちゃんっ」


少し拗ねたように口を尖らす、そんな仕草さえも可愛い。


「ごめん、ごめん。でもさ、毎日のように外を歩き回ってる訳でもないみたいだし対策しようがないんじゃないかな。それこそ縛り付けたり出口を塞いだりなんかしたら何かあった時に怖いよ」


火事や地震など思わぬ災害に見舞われた時、逃げることが出来なくなる。


「そうか…。そうだよね…」


紅葉はシュン…としたように下を向いてしまった。


「………」



確かに紅葉の気持ちを考えると。きっと、気が気じゃないんだろうな…とは思う。

自分の意思とは別のところで行動してしまう『自分』。


(外へ出て何をする訳でもないのだろうに…。敢えて出て行く、そこに何か意味はあるんだろうか?)


紅葉の心の問題や心境の変化でもあるのか。


(でも、追い掛けると逃げるっていうのは、ある意味スゴイよな…。そんな夢遊病患者、聞いたことない)


実際、意識が眠っているとはいえ、身体は起きている時のように周囲を見て行動しているのだから反応することは可能なのかもしれないが。


(それをいちゃうっていうんだから、驚きだよな…)


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