第11話

だから、ある意味紅葉が自分の好みのタイプだと言っても過言ではないのだが、学校での紅葉は普段の様相とはかなり違ったものになっているので、あまり声を大にしては言えない複雑なところでもある。


長い睫毛まつげふちどられた二重まぶたの愛らしい大きな瞳を隠す、分厚い眼鏡。


学校の友人たちは知らないことだが、実は…これはいわゆる伊達ダテ眼鏡というやつで度は入っていない。紅葉の視力は元々悪くはないのである。


髪型については、校則で肩を越える髪はわかなくてはならない決まりなので、髪の長い女子は皆結んでいるものなのだが、敢えて真面目そうなイメージを持つ三つ編みを選んでいたりする。


何故、紅葉がそんな変装まがいなことしているのか。それには理由があった。


それは、紅葉のある『病』がキッカケだった。



紅葉は俗に言う『夢遊病』持ちだ。


夢遊病とは、睡眠中に発作的に起こる異常行動のことで、無意識の状態で起き出し、歩いたり何か行動を起こしたりする。そして後に再び就眠するのだが、その間の出来事を本人は記憶していないのだそうだ。


紅葉には幼児の頃から、そのがあった。

それは幼児にはよく見られる程度のもので、布団から起き出して家の中を歩き回る等、カワイイものだった。


だが、それが成長するにつれて行動範囲が広がって行ってしまった。

外へ出て行くようになったのだ。


本人は眠っているのに、まるで起きているかのように普通に外へ出て行ってしまう。


流石にこれは問題だろう。


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