第28話

そこは、やはり朝霧の部屋のようだった。


ドアから正面に面した窓際には机。そして横には本棚やベッドなど一通りの家具が揃えられている。

だが、やはり広さは半端ない。


(うわ…。私の部屋の三倍はあるんじゃ…?)


実琴は目を丸くして室内を見渡した。


奥にはオーディオやテレビ、ソファーまで置かれていて、下手したらこの部屋だけで家族で生活できるのでは?と、思ってしまうほどの充実さだ。


朝霧は部屋のドアを閉めると、同時に実琴を床へと下ろして解放した。


(えーと…。自由にしてて良い…ってことなのかな?)


実琴は暫く下ろされたドアの前できょろきょろしていたが、部屋の奥へと行ってしまった朝霧の後を追うように、ゆっくりと部屋の中へと足を進めた。


(わぁ…本当に広い…)


目線がかなり低くなってしまった分、余計に部屋の広さを実感する。

子猫であるこの身なら思いっきり走り回れそうだ。


(広いからっていうのも勿論あるんだろうけど、綺麗に片付いてるなぁ。流石、朝霧って感じだよ…。武瑠たけるの部屋とは大違いだわ)


いつも恐ろしいほどに散らかっている弟の部屋を思い出し、実琴は苦笑を浮かべた。

実琴には、三つ年下の弟がいるのだ。


(ま、武瑠と朝霧じゃタイプが全然違うか…)


そんなことを考えながら何気なく朝霧のいる方へと視線を向けた実琴だったが。次の瞬間、飛び上がった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る