第14話
(ちょっ…どうすればッ?…そうだ!爪っ!猫と言えば爪だよねっ?うぅ…でも爪ってどうやって出せばいいの??)
悪戦苦闘している間にも、後方では主事が学校名を大声で伝えている。
風が強くなってきていて、どうやら声が届きにくいようだ。
だが、何にしてもこのままでは救急隊員やら人が沢山集まって来てしまう。
こんな恥ずかしい姿のまま、囲まれたくはない。
実琴は慌てた。
いや、木登りして落ちてる時点で十分恥ずかしいのだが。
すると…。
「おい、エロ猫。何をやっている?」
「にゃあ!」
実琴は再び首根っこを掴まれて持ち上げられた。
今度は目の高さまで上げられ、ジッ…と正面から見据えられる。
(え…エロ猫だと~!?)
その酷い言いぐさに頭に来て、実琴は暴れた。
(聞き捨てならんッ!お前って奴はッ!お前って奴は~ッ!この~ッこの~ッ!)
だが、小さな身体では大した抵抗にもならなかったようで、朝霧は冷めた視線で見ているだけだった。
そんな相変わらずの朝霧の様子に、逆に疲れ果てた実琴は脱力した。
観念したように大人しくなってしまった子猫に、朝霧は僅かに表情を緩めると、小さく独り言のように呟いた。
「もしかして、お前を助ける為にコイツは木に登ったのか?」
そうして倒れている少女を見下ろすが、ふと何かに気付いた様子で屈み込んだ。
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