ライバルは……
「二人とも凄い気迫だねっ」
夏樹が圧倒されながらも感心するように手を叩いて言った。
「本気で戦ったら良い勝負なんじゃない?」
その言葉に息を整えていた冬樹と雅耶が笑いながら言った。
「いや、段持ちの雅耶には敵わないよ」
「なーに、
並木と仕事を共にしている冬樹が、時々野崎の家に帰るようになったある日曜日のこと。
珍しく偶然休みが重なった夏樹と冬樹と雅耶の三人は野崎の家のリビングで会話に花を咲かせていた。
冬樹と再会した時の話などを振り返っているうちに、流れから格闘技や空手の話になり、何故か雅耶と冬樹で組手をしてみようという話になった。
そして庭に出た雅耶と冬樹の二人をリビングから見ていた夏樹がこぼした言葉が文頭のアレである。
「ふゆちゃんは、
「僕の場合はわりとまぜこぜだよ。雅耶のは正統派だよね。やっぱり全然違うもの。形が綺麗だよね」
「そうかな?まあ、お前達がいなくなってからもずっと基本からみっちりやって来たけどなぁ」
お互いの力を認めながら語る二人を、夏樹は微笑ましそうに見ていた。
やはり見せ掛けだけだった自分とは違い二人は強くて
「良いなぁ。私も強くなりたい」
思わずこぼした呟きに、ぎょっとした二人から速攻ツッコミが入る。
「おいおい、夏樹はもう良いよっ。それ以上強くなってどうすんだってっ」
「そうだよ、なっちゃん。なっちゃんは女の子なんだから……」
「えー。だって、女だって強い方が良いよ。何かあったときの為にはさ。自分の身は自分である程度守れないと……。二人だって強くなる為に沢山鍛えたんでしょう?何か目標とかってあったりしたの?」
その何気ない夏樹の言葉に。
雅耶と冬樹は顔を見合わせると。
それぞれ同時に口を開いた。
「「打倒!直純先生!!」」
「……かな?」
「……だなっ」
何故だか妙に息がピッタリ合っている二人に。
(二人がそんなに直純先生を意識していたなんて知らなかったなぁ……)
確かに二人の格闘術の原点ではあるのかも知れないけれど。
二人から思ってもみなかった名前が出て来て、夏樹は「へぇー」と、ただただ感心するのだった。
実は、夏樹は知らなかった。
雅耶と冬樹が二人して直純をライバル視している理由が、実は過去に夏樹がカッコイイ人として直純の名を
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