誓い

第70話

「うえ″~ぇ″」




次郎の驚く声が、こだまする。




「付き合って30年目?」




「僕が生まれる10年も前から」




「って言うか僕の親より年上のような…」




「気になっていたのですけど、太郎さんって何才なんですか?」




「夢を追った時から年なんて、とっくの昔に忘れたよ」




何をカッコつけているのやら。




「込み入った事を聞くようですが、何故結婚しないのですか?」




「俺はな、ミュージシャンとして成功するまでは、ツボ子とは一緒にならんと誓ったんや」




「ツボ子には悪いけど…」




このオバサン、ツボ子って言うんだ、もし太郎さんと結婚したら、蛸橋ツボ子になる。




蛸には壺が必要か、良く出来てるなぁ。



「ううん、ええんよ、あたいは太郎ちゃんが成功するまで、何時までも待ってるから…」




いやいや待ち過ぎだろ。




半世紀に挑戦か。




生きてるか?




特に太郎。




「だって、あたいが太郎ちゃんのファン第1号やで」




「それに信じてるもん…」




しかしこの男、本当に幸せ者である。

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