第38話 光星教会

「ふぁ~。おはようアキラ……」


「おはようございますお父さん」


 歓迎会を終えて次の日。

 飲み過ぎてお昼まで寝ていたレッグスが起きてきて挨拶を交わす。

 眠そうに大きなあくびをしてる彼。二日酔いにはなっていないみたいだけど、気だるそうにしてる。


「お~い、レッグス」


「この声はライリーか」


 家の外から声が聞こえてくる。レッグスが気だるそうに扉に向かう。


「ははは、まだ酔ってるのか?」


「ああ、少しのみすぎたみたいでな」


 扉を開けるとライリーに笑われる。


「それで何か用か?」


「ああ、お客さんだよ。断ったんだけどしつこくてね」


「え?」


 ライリーは困った様子で答える。お客さんだけど、断ったって? もしかして貴族とかそう言った人達かな? 僕らが帰ってきて1日しかたってない。流石にないかな。


「レッグス。【光星教会】の司祭様が」


 村の入り口に案内されるとエミとウィドがいる。二人の後ろに司祭の服を着た人と複数の信者が僕らを見てお辞儀をしてくる。


「あなた様がこの村の代表の方ですね。このお三方では話にならないのでお呼びいたしました」


 司祭はニッコリと微笑んでそう言ってくる。三人は首を横に振って嫌そうな表情を作ってる。なんとなく察しちゃうな。


「光星教会をこの村にお作りになるべきだと思うのです」


 僕の思っていた通りのことを言ってくる。レッグスが欲しいという貴族が来るにはそれなりに時間がかかる。まったく別の話だとは思っていたけど、教会か。あまりいい印象は受けないんだよな~。


「申し訳ないがこんな小さな村には必要ない」


「……本当にそれでよろしいのですか?」


 レッグスが断ると司祭は睨みつけて答える。


「いらないですね。それとも、断るとあなた方は何かをしてくるんですか?」


「はっはっは。我々は何も致しません。ただ……『魔物』が多くやってくることでしょう。教会の結界がないのですから」


 更に断るレッグスににらみを利かせる司祭。明らかに脅しのような言葉を吐いてきてる。本当に司祭様なのか?


「教会の結界? そんなもの聞いたことないぞ」


「おやおや勉強不足なのではないですか? 光星教会は光の魔法を魔石に宿し、【天使】の力で結界を張るのですよ」


 ウィドの声に司祭が話し出す。天使……ここでもその単語が出てくる。光星教会も魔物を使役してるってことかな?


「ふふ、面白い話をしてるわね」


 司祭の話に首を傾げているとフラムさんがフィールちゃんと一緒に現れる。


「何が可笑しいのですか? 我々が何か可笑しなことを言いましたか?」


「ふふ、可笑しい事を言っているわ。だって魔石に光魔法を宿すのは分かるけれど、そこでなんで天使が出てくるのかしら? 魔法の力じゃないの? 天使の力になっちゃうとまったくべつの話になると思うわ」


 笑うフラムさんを見て機嫌を損ねる司祭。そんな司祭に彼女はニッコリと微笑んで説明してくれる。

 魔石を活性化させて従魔として天使を使役するのは分かる。それで結界の魔法を使ってもらうとかね。司祭の話は少しおかしかった。


「ぐぬぬ。罰当たりな。女! 我ら光星教会に唾はくとは、碌な死に方はせんぞ」


「あら? 少し指摘しただけで化けの皮が剝がれたわね」


 司祭は声を荒らげると村から離れていく。


「お父様に手紙をしたためるわ。あんな低俗な司祭は我が国には必要ない」


「お父様? じゃあ、私のお爺様!? 会ってみたい!」


「そうね! どうせだからここに呼ぼうかしら」


 フラムさんは静かに憤りを見せる。フィールちゃんはお爺ちゃんがいることに気が付いて嬉しそうにしてる。

 でも、フラムさんはグラフと離婚することになって監禁されてたんじゃなかったっけ?


「お母様! お爺様は優しい人なの?」


「ふふ、とても優しいわ。私を罰することを家族に言われたけれど、監禁で許してくれた。その監禁も引っ越しをしただけで、自由に外に出ることが出来た。お父様のことを考えて外にはいかなかったけれどね」


 フィールちゃんに優しい笑顔で答えるフラムさん。彼女のお父さんも優しいけど、フラムさんも優しい人だ。


「フラムさん。お父さんって教会に意見を言えるほどの人なんですか?」


「あ、言ってなかったかしら。私、王族なのよ。改めて自己紹介をするわ。継承権第三位王女【フラムベル】よ」


 僕が質問するとフラムさんはさも当たり前のように答える。そういえば、王族だってグラフが言っていたっけ、親しみやすかったから忘れてた。ってことはお父様って王様!?


「……じゃあ、私もお姫様?」


「ふふ、そうなるわね」


 まさかの真実にフィールちゃんはポカンとして表情で問いかける。

 彼女は宮廷魔術師と王族の間に生まれた天使ってわけか。何だか属性が盛られ過ぎて、頭がこんがらがっちゃうな。


「レッグス。ちょっといいか」


 フラムさんの話を聞いて驚いているとウィドが声をあげる。

 レッグスに抱かれながら僕を一緒に話を聞く。


「光星教会に逆らって消えた村をいくつか知ってる。消えた村には決まって光星教会のやろうが来ていたんだ。教会を建てることを断った次の日に魔物の群れに襲われてる。何かあるぜ」


 ウィドはそう言って司祭たちの背中を見据える。何かやってくるってことか。

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