※駒崎 樹

駒崎 樹   前編

『あの子でしょ!

ほらほら窓際の!』


廊下の窓からは無数の俺を見るいくつもの目が恐怖になる。


駒崎樹こまざき たつき 中学三年。

高校受験を目前に控えた大事な時期だというのに…


先週からテレビCMで流れている化粧品に俺の双子の兄が出ている。


そのせいで、外野がザワザワと…


俺を見つけるなり


「ほら!CM出てる子!」


「でも、実物はそうでもないね…」


そりゃそうだろ、俺じゃないんだから!


双子と言っても俺が中学に上る前に両親の離婚で兄は父親が、俺は母親がそれぞれ引き取って、俺は母親の実家に越して来たのだから…


そもそも友達と呼べるような人は居ないし、自分の生立ちを話すほど仲いい人もいない。


だから、引っ越しして来た位にしか、知らない人達だ。




特別イケてるわけじゃない。


アイツのせいで…


俺の方が今思えば社交的だったのに、子供らしさをもたなかった兄のせいで、表立っていたのは俺だったのに…


この3年間の間でアイツは変わったんだ。


俺も変わった。


お互いが窮屈だったんだ。


「化粧で変わるもんね〜」


その言葉そっくりお返しします!


と、言いそうになって心に留め置いた。


そう、俺はこれからもこのままで良い。


そんな俺にも、ほんの少しだけちょっとだけ最近気になる事があるんだ。


興味本位じゃなくて、騒がれる前から気になってたんだけど…


最近あの子は元気がない。


その事が、今の俺の心を痛めるんだ。




駒崎樹の憂鬱〜一部終了〜

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