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「瞳。」
半個室の居酒屋が一気に静まるほど大きな声で謝り続ける私を呼んだ昂は自分のポケットに入れていたティッシュで私が落としたマスカラを拭き取ってくれる。
昂「俺は瞳に謝られることをされた覚えはない。だからそんなに自分を責めないでよ。」
瞳「…ずっとしてた。だからもう別れる。」
昂「瞳は俺を好きじゃなくなった?」
と、あの日の私のように昂は好きな気持ちがなくなってしまったのか聞いてきた。
その時、私は朧月みたいだった蕾を思い出し、今の気持ちを伝える。
瞳「ずっと好き。けど、元彼とずっと比べてた。」
昂「いい彼氏だったんだね。」
昂はちょっと悔しげに目を細めて涙袋に水を溜めてしまう。
けど、蕾を罵ったりしない初めての他人で私はまた昂の好きが増える。
昂「比べてていいよ。綺麗なものって簡単に頭から離れられないもんね。」
瞳「…だめ。」
昂「いいの。俺もそう。」
そう言って頬を優しく撫でてくれる昂の目を私はやっとまっすぐ見られる。
昂「俺は外の瞳も篭りな瞳も好き。どんなとこにいても目を輝かせて楽しんでくれる可愛い瞳が大好き。」
昂は私を過去から現実に引き戻すよう、頬を軽くつねって笑った。
昂「俺もたまに元彼と瞳を比べることがあるけど、瞳以上にいい彼女いたことない。」
瞳「それは絶対嘘…。」
昂「嘘じゃない。みんな金をむしるか見た目で決めるもんっ。」
と、自称イケメンと謳っている昂は自分の頬に人差し指を指してぶりっ子する。
昂「俺と一緒にいる時間を大切にしてくれる瞳とこれからも一緒にいたいって思ってるんだけど、瞳は嫌?」
昂はまた私の苦手な悲しそうな顔をして私の覚悟をつまみ捨てるように頬から指先を離した。
私は昂のおかげで正直になった自分の気持ちを素直に伝えることにした。
瞳「嫌。」
昂「…そっか。」
と、昂は残念そうに呟き、今日たくさん使った体を背もたれに預ける。
瞳「昂と別れるの嫌。」
昂「……そっちかよ。」
昂は私の口下手に笑い、嬉しそうな顔で店員さんにお会計をお願いした。
環流 虹向/ピンヒールでおどらせて
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