649:13:38
「え…?違うの…?」
違うよ。
付き合うために一晩過ごすバカ、どこにいるの?
…まあ、ここにいるけど、それは昔の自分だから。
私は自問自答をして虚しくなりながらも、時音から受けた告白を断る。
幸来未「めんどくさいの好きじゃないもん。」
時音「…てっきり付き合えるんだと思ってた。」
幸来未「ワンナイト初めてなの?」
時音「違う、けど…、いや…ちが…んー…。」
どっちなんだよ。
まあ、私には関係ないか。
幸来未「メッセージも、わざわざ予定決めて会ったりするのも、めんどくさいから好きじゃないの。だから彼氏欲しくない。」
時音「なんで…、スタンプはくれたの?」
幸来未「ご飯ブログにいいね押してただけ。」
時音「えー…?一緒に食べに行きたいとかは?」
幸来未「外食はお金かかっちゃうからあんまり行かないし、1人でゆっくり食べたい。」
時音「昨日は一緒に食べてくれたじゃん。」
幸来未「タダ飯食べられるって知ったから。」
私が本音を全部伝えると、時音は寝癖で少し跳ねてる頭を抱えて起こしていた体をベッドに倒した。
幸来未「そろそろ帰りたいから準備始めていい?」
時音「だめ。まだ。」
なんで?
もう電車はあるし、お日様も登って新しい1日始まったし、今日は好きな漫画の実写化映画が最終公演の日だから最後にもう1回見に行く予定なのに。
私が本当の予定を誤魔化して伝えようと口を開きかけると、ベッドに突っ伏していた時音が私の脚の上に這い上がってきて腰を抱きしめた。
時音「僕がめんどくさい人じゃないって分かったら付き合ってくれる?」
お腹を抱きしめ続ける時音は初めて私に上目遣いをしてきた男になった。
幸来未「…どうやって証明するの?」
時音「幸来未が呼びたいタイミングで僕のこと呼び出してよ。僕が走って迎えに行くから。」
幸来未「毎日メッセージ送ったりしなくていいの?」
時音「これからもブログ更新はするから、いいねと生存確認のためのスタンプ1つ送ってくれればいいよ。」
それは魅力的プラン過ぎる。
ホテルを出て映画の待ち時間にブロックでもしようかと思ってたけど、買えてなかった映画のパンフレットを見る時間にしようかな。
時音「お願いっ。めんどくさいことはしないようにするから。たまに会おうよ。」
幸来未「じゃあこのこと、友達に言ったりしないでね。」
時音「え?うん。幸来未が嫌ならしないよ。」
幸来未「あとは絶対1人で来てね。私、大人数好きじゃないの。」
時音「うん。分かった。ちゃんと約束する。」
そう言って時音は私の小指を取り、指切りげんまんをして満足そうな笑顔をすると体を起こして私にキスをした。
時音「朝ごはんは?一緒に食べる?」
幸来未「ううん。用事あるから準備出来たら帰るよ。」
時音「…そっか。駅まで送るね。」
何か言いたげな時音だったけど、約束したばかりだから何も言えないんだろう。
けど、めんどくさいわがままを言ってこないだけマシだなと思いながら、私はガウンから昨日の服に着替えて忘れ物がないか確認する。
すると、先に帰る準備が出来た時音は玄関前で私のことを待っているのに自分の携帯を置いてけぼりにしようとしていた。
私はそれを見兼ねて充電ケーブルごと回収し、時音に渡す。
時音「あ!忘れてた。ありがとう。」
幸来未「うん。気をつけてね。」
私はお気に入りのスニーカーを履き終えて、初めて会った時のようなスーツもどきを着ている時音と一緒に駅に向かう。
その間、時音は昨日の夜に会った時の距離感をしっかり保ち、自分から手を繋いでくることはなかった。
うん。これがちょうどいい。
気が向いたらまた呼び出して少し体温を分けてもらおう。
私は久しぶりに出来た
環流 虹向/23:48
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