第42話
弥生さんのアパート付近に到着し、ナビが終了した。
車でぐるぐる回り、アパートの名前は確認できたが、105号室がよく分からない。
僕は車を路肩に停めて、弥生さんに電話をかけた。
しかし、何度かけても繋がらず、具合が悪くなり、部屋で倒れていたらどうしよう……と不安が過る。
とりあえず、部屋番号を探してみることにし、アパートの敷地内に入った。
『ドン、ドン、ドン』
その時、何やら奥の方で音がし、僕は音のする方に向かった。
行って見ると、そこにはドアを叩いている男がいた。
その男は、
「いないのか?もしいたら出て来てよ。謝るからさぁ」と悲しそうに声を上げている。
浮気でもして、締め出されたのだろうと想像した。
すると今度は、
「弥生――出てこい」
と怒り狂い、ドアを思いっきり蹴った。
「弥生……?」
僕は、その名前にハッとし、その男が、弥生さんの彼氏だと察した。
がっちりした身体つきで、格闘家の様な風貌。目がギラギラして、様子がおかしい。
僕は怖さより、弥生さんが心配で、彼の方へ歩いて行った。
すると彼は、パーカーのフードを深くかぶり、顔を隠した。そして逃げるように去って行った。
彼が立っていた部屋を確認すると、やはり105号だった。
僕は急いで、インターフォンを鳴らしてみた。
しかし応答は無い。
今度は、ドアを軽く叩き、
「弥生さん、輝です。チロルのマスターです」
と、声をかけてみた。
すると『ガチャ』っと音がし、小さく扉が開いた。
「マスター……?」
暗闇から、か細い声がする。
「弥生さん、もう、誰もいないから大丈夫ですよ」
弥生さんは僕だと分かると、扉を大きく開け、僕を玄関に入れた。
真っ暗な室内で、弥生さんの顔は見えないが、
弥生さんの、鼻水を啜る音が聞こえた。
僕は手探りで、弥生さんの頭を撫でた。
「弥生さん、僕の家に戻りましょう。彼がまた戻って来るかも知れないから……ねっ。お願い」
弥生さんは頷き、荷物を取りに部屋に入って行った。
僕はその間、彼が戻って来ないように、外で待機し、弥生を警護した。
胸がすごくドキドキした。
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