第32話

なんか、悔しい。

ペコは私の犬なのに。


なので、腹いせでは無いけれど、私もジャンヌと仲良くなってやろうと思い、


「ジャンヌ♪、sit!」


おやつを片手に躾を開始。



「……ジャンヌ? sit……?」




だけど、おやつにも私にも見向きもせずに知らん顔。


くそー。


強引に手を掴み、「シェイク!」と、お手を求めても、それを払い除けるように外され、プイッとそっぽを向く始末。



「なに、この疎外感」



こんな漫画みたいなことってある?




「発音が悪いし、ジェスチャーもつけねーから犬も分からないんだよ」



呆れるように笑った門口が、ペコに再び英語で躾を始めた。



「シェイク!」



お手もお代わりも完璧。

見ると確かに、門口はジェスチャーをつけている。


そのあとワシャワシャと誉められて、ペコが嬉しそう。



「俺は犬も人間も躾るのが好きなんだ」




あ、そ。






すっかり賢くなったペコとジャンヌがランを走り出した頃、



ブブ♪


友達からラインが。



【待ち合わせのジョイジョイに向かってるよー】



忘れてた。


結婚式の服、買いに行く約束してたんだった。

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