最後のアンカー

第1話

それは、小さな一室での出来事だ。



「もう、俺らも引退……か。」



「だな。そろそろ真面目に就活でもする気になったのか?仁。」




薺は目の前にある煙草に目をつけながら、後ろにいた仁にそう声をかける。



仁は薺が見ている煙草を取りに行き、もう一度それを口に含む。




「おい、聞いてっか?」



「聞いてるんじゃない?」



適当に答えを返してくる仁に、薺は溜息を吐きそうになって灰皿を渡す。



素直にそれを受け取った仁は、煙草をその上で消す。



「今頃になって、俺の心配?薺にしては、珍しいね。」



「お前、からかってんのか?」



仁の返答に少し気にいらなかった薺は、座っていたソファから立ち上がる。

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