第27話
『……て、テル。もう大丈夫だから、下ろして……。』
よりにもよって、お姫様抱っこと言うものを自分がされようとは思ってもみなかった。
珍事件に遭遇して珍事。
がっしりと肩を抱く腕は力強く、触れあう箇所に熱が生まれる。
『テル!』
「ほいほい。」
玄関には既に生徒は残っていなくて、二人だけの状態にホッと胸を撫で下ろした。
今朝、イチ姉に俵担ぎされた少年が脳裏を過りこんな気持ちだったのかとぼんやりと頭の隅で思った。
『あ、あの……ありがとな。……な、なに?』
あの空間から抜け出せた安心感でホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、俺の胸を大きな手が包む。
くびれから腰を撫でて、にっこりと妖しい笑みを浮かべるテル。
「ぺちゃってても女の~ぅぶっ!!」
『いやいや、何ナチュラルに触っとんじゃっ!』
テルの顎を押して、胸に当ててきた手を捻り上げた。
抗議してきたテルの頭を鷲掴みにして校門を出た。
『助けてくれても、許可なく女の胸に触れんのはアウトじゃボケ。』
「ごーめーんーっ!いたーい!!ねえねえー夏樹って恋愛対象は男?」
『ああ、スカートが嫌いってだけで身も心も女だぞ?恋愛対象は男だ。』
「そかそかー良かったー。」
『お、おう?』
のらりくらりと俺の手から逃れ、テルはへらりと笑うと俺の手首を握って歩き出した。
この日、テルが連れてってくれたのは優しいおばちゃんが営む商店街の定食屋さんだった。
帰りにゲーセンにも寄り道している頃には、今日の珍事件のことなんか頭から抜け落ちていた。
≪夏樹side end≫
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