第6話

『うーん……こっちか?』



「反対じゃない?」



「もっと上では?」



「……真っ直ぐ。」



私たち三人じゃ着かなそうだと、それして、早く下ろしてほしいと道案内を始めた少年。

それ通りに従うと、確かに理事長室の看板が見えてきた。



「も、もう……下ろせよ。」



『はいはい。乗り心地は如何でした?』



「てめぇが女じゃねぇことだけは分かった。」



それだけ言うと、最後に私たちを睨み付けて来た道へと駆け出した。



『あ……名前。』



既に角を曲がった少年の姿はなく、名前を聞きそびれた自分に軽くショックを受ける。

なんて名前だったんだろう。

名前さえ分かれば、クラスを知る方法はたくさんある。

この広い校内にいる生徒の中から、あの少年を探すことが果たして私に成せるだろうか。

第一、何故私はあの少年のことを探そうとしている?

名前が知りたいのは、それだけが理由?



分からない。

どうやら、本格的に頭がショートしてきているのかもしれない。



 可愛かったから?

泣かせてしまったから?

案内してくれたから?



どれも、少し違う気がする。

なんだ、コレ。 

胸が苦しくて、あの十数分がフワフワと現実味がない。



泣き顔は見れなかった。

それを見たら、この胸のざわめきが何なのかその正体が分かるだろうか。



コンコンとノックすると、中から男の低い声がした。



『大神です。失礼します。』



ゆっくりと扉を開くと、理事長室に足を踏み入れた。




《一樹side end》

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