第7話
祖父の言葉に大人しく首を縦に振る───ことなどなく、私はテーブルにフォークを突き刺した。
さすが一つの組織を束ねるトップであるだけに、威圧感と重圧が桁違いだった。
金縛りにあったように動けなかったから、懐に忍ばせていたフォークで空気を切った。
「ヴァ、ヴァイオレンス孫娘……」
『嫌です。私は普通の極々普通の一般ピーポーとしてこの先の人生を全うしたい。』
父と母のように、事実婚のような幸せも良いと思う。
二人の姿は私の憧れで、自慢だ。
でも二人を見てきたからこそ、いつか誰かと結婚して家庭を築いて贅沢しなくてもいいから共に歩む人生を送りたい。
『一人娘の母が後を継がないから、私ですか?』
「そうだ。僕は別にアオでもいいんだよ。アオにも君にも勿論、黒斗くんにもその資質がある。」
『父は警察官という職に誇りを持っています。それは母も同じで、フラワーアーティストとして夢を追いかけている。』
自分の声とは思えない抑揚のない低い声。
父が自分の夢を諦めることを母はもっとも拒んだ。
しかし、対局に位置する自分とでは周りに知られてしまった時に父が厳しい風当たりに曝される。
現に母と結婚しようとしていた父は勘当され、それでも母を選んだが母は父が警察官になった覚悟を知っていた。
父が全てを手放す想いでしたプロポーズを、母は受け取らなかった。
自分と結婚したら父が警察官ではいられない。
その後二人は話し合いに話し合いを重ね、事実婚で取り敢えず収まった。
『つまり貴方は、父と母を人質に私を脅しているんだな。』
「そうしたくはないが、そうする他ないならそう言うことでいいよ。恨まれようとも憎まれようとも、私も守りたいものがある。」
『……父と母には言ったの?』
「黒斗くんは猛反対している。アオは自分がなると言った。それを聞いた黒斗くんは警察官をやめ、アオと結婚して自分が継ぐと言ったよ。いくら資質があろうとも、彼は優秀すぎる警察官だからね……こちらの世界でも有名だよ。」
『っ!』
二人の夢を踏み潰そうとする祖父を睨みつけ、ゆっくりと息を吐き出して目を閉じた。
脅しだ。
こんなクソ野郎が自分の祖父か。
『……いいよ。その脅し、乗ってやるよ。』
「賢い子だ。」
『後悔しても知らねぇぞ。』
「いや、それは絶対にない。一ヶ月後、君はうちで暮らしてもらう。」
『……分かった。がっ!!しかし────!』
こうして私は母と飛行機に乗った。
まだ学生の内は父と母といたかった。
三人で暮らしていたのは小学校四年生の春まで。
目を覚まして、まだ走り続けるタクシーの外をもう一度見つめる。
あの日、私と祖父は契約をした。
念書まで書かせた。
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