第12話

『桃里ギリギリ珍しー。』



「……うん。」



今日は桃里がずーっと上の空。

学校でなにかあったのか?



「お前学校サボり?」



『ほら、不良だから。』



「威張るな動け。早く帰る。」



桃里のせいで色さんに怒られちゃったよ。

今日も今日とてお店は繁盛してました。

今は片付け中でございます。



「紺、ゴミ捨て。」



『はーい!』



ゴミ捨て場、暗いから苦手なんだよね。

でも仕事だから仕方ない。こういうところから慣れないと。

今日も働いたなー、と重いゴミ袋を担いでゴミ捨て場に置いて颯爽と戻ろうとした時。



「クゥ~ン……」



『……む?』



幻聴か?と思ったが、恐る恐る声のした暗闇へ。



『む?』



「クゥ~ン?」



『“拾ってください”だと……?』



「キャンッ!」



なんて無責任で身勝手なセリフ。

まだ暑さが残っているとは言え、夜は気温下がるんだからな!



私が首を傾げると、ソイツも私と一緒に首を傾げる。



今の時代、まだあるんだこういうの。

タオルケットが敷かれた段ボールに“拾ってください”と書かれ、その中で震えて泣いている子犬。

下がっていた耳がひょこんっと立ち上がり、尻尾は垂れていた。

さっきまで待ての姿勢だったのに、今はだらしなく寝転がって涎を垂らしている。



────か、可愛い!!



でも私、動物に好かれないからなぁ……。

飼い主くらいは探してやるか。これも何かの縁だ。



『こんなところ嫌だろ。よっこいしょ。飼い主探してやるからなー。』



「クゥ~ン?」



こうして、私は子犬を連れて帰ることになった。

そしてまたこれが私を悩ませる。



光くんの車の中で犬と戯れていた。

動物に好かれないはずの私に、この犬は愛くるしい真ん丸の潤んだ瞳で甘えてくるのだ。



『か、可愛い……』



「ずっと寝転がってるけど、具合悪いのかな?」



『出会ったときは座ってた。それからずっとこんな感じ。』



「病院連れていって見ようか。」



光くんの言葉で獣医さんの元へ……と思ったが連れてこられたのは普通の病院。

しかも閉まっている。

病院の扉をドンドンと容赦なく叩く光くんに冷めた目を向けた。



営業時間外って迷惑だよね。ダメだよ絶対。



「あ”!?」



案の定、厳つい巨漢男が一人一人殺しそうな眼光で出てきた。



「先生、見てほしくて。」



『夜分遅くにすみません……。』



「……なんだ。そっちの若い方が礼儀なってるってどうなってんだ。みくじに言うからな。」



「あはは!」



「チッ」



どうやら光くんとは仲が良いみたいだ。

みくじさんのことも知っているのか。



「紺ちゃん、この人は柳がお世話になってる医師の早乙女先生。獣医でもあるから大丈夫だよ!」



『八雲紺です。早乙女先生すみません。』



190は越えているであろう大きな体。

服の上からも常人場馴れした筋肉が伺える。

鼻から頬に掛けて一本の切り傷がある強面。



……カタギっすか?



「挨拶できる奴は嫌いじゃねー。入れ。」



早乙女先生に子犬を見せると、何ともないと言われた。

家に帰ったら風呂に入れるように言われた。



『ありがとうございます!』



「良かったね。」



「光、ボトル奢れよてめー。」



「……はーい。」



光くんが親に怒られた後の子供のような顔をしている。

初めて見る表情。ちょっと可愛かった。



『飼い主探すのに綺麗にしないとかー。犬って水怖がりますよね。』



「え、飼うんじゃないの?」



『僕動物に好かれない体質なんだよ。それに……』



あそこが実家だったら飼いたかった。

でも、実家でも飼えなかっただろう。

なんせ父が私と同じ動物に好かれない体質なんだもん。



「それに?もしかして遠慮してるの?紺ちゃんが?」



『その言い方腹立つな……。それに生きてるんだよ。半端はできない。』



「それが分かってんなら問題ねーよ。少なくともソイツの元の飼い主より、お前は分かってる。それに、お前は好かれないっつってるが、そいつはお前のことずっと見て甘えてるじゃねーか。」

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