心労と恋心

第137話

部屋から出た蘭勝は、ひとまず溜息を吐いてから歩き始める。



暗い廊下を歩いている蘭勝の目には、色が映っておらず―――…いつもの不気味な笑みは浮かんでいない。



一体、彼は何を考えているのか……、それを知る者は誰の一人も存在しなかった。



この世に、大稀が死んだ時から―――…ずっと、彼の本音を知る者は存在しなくなっていたのだ。







「……だせえな、俺。」



そう呟いた彼は目を擦って、腕を振り下ろす。



―――…大稀。



彼の名前を、心の中で呼ぶ。



涙を、流す。



止まらないソレを彼は拭うことを、しない。



彼の涙を見た者は………きっと見たことがあるのはほとんどいないだろう。



こうして、悲しそうに悲しそうに涙をただ流しているこの男を。

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